『銅器着色のペンダントライト』

tone ペンダントライト


「あんなに片付けが下手だったのにね」

遊びに来た母がリビングを見渡して言う。

「何回も昔の話、しなくていいから」

来る度同じことを母に言われるほど、昔は片付けが下手だったのは事実なのだけれど。

「一人暮らし、してよかったってことよね」

毎回やっぱり同じ結論を母が口にする。

寂しいのか暇なのか、それとも心配しているのか。

母は月に1回、わたしの休みに遊びに来る。

父が遺したマンションは、母とわたしで暮らすには十分な広さがあったのだけれど、

働き出して始めた貯金で、わたしはマンションを借りた。

一人で暮らすことへの憧れもあったし、なにより。

「彼氏さんとは、うまくいってる?」

これまた同じ質問を母に投げると、母は頷く。

「おかげさまで」

父が亡くなって7年。初めて、母に恋人が出来た。

父が亡くなって一度も模様替えをしなかった母が大掛かりな模様替えをした時、

わたしは家を出ることを決めたのだ。

全く同じ色がふたつとない、と勧められて買ったお気に入りのライトが、

向かい合って座る母と私を照らす。

わたしにとって父は父であり続けるけれど、母を支える人は別にいてもいい。

盛り付けたサラダをテーブルに並べる。

わたしも自分の人生に、お気に入りで彩を加えよう。

食器を選ぶように。照明を選ぶように。




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銅器着色のペンダントライト