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h collection
輝きを生み出す匠の技
石川県金沢市の緑に囲まれた静かな住宅地に、カットガラス作家 廣島晴弥さんの工房があります。 一歩足を踏み入れると、窓から差し込む自然光を浴びて、棚やテーブルに並べられたカットグラスの一つひとつが、キラキラと輝きを放っています。 その繊細なカッティングは、時を忘れて見とれてしまうほどの美しさ。 今回は、廣島さんのものづくりに込められた想いと、カットガラスの奥深い世界についてお話を伺いました。
カットガラス製品との出会い。専門学校からプロの職人へ廣島さんがガラス製品に興味をもったのは、とあるラジオ番組がきっかけでした。 「バーを設定にした番組で、カウンターにバーテンダーがいて、グラスに入った氷がカランと鳴り、聞き耳をたてるお客がいる……。そんな世界に憧れたんです。 その番組の本をたまたま本屋でみつけて開いたら、カクテルグラスの写真が本当に綺麗で。そこからガラス製品に興味をもちました」
廣島さんが大切に持ち続けている本『Tokyo Moto-azabu Avanti cocktail book』 カクテルグラスから生まれた憧れを胸に、廣島さんはガラスの世界への一歩を踏み出します。 ガラス工芸で有名な北海道小樽の工房に問い合わせたところ、地元の石川や隣の富山にもガラス専門学校があると教えてもらい、富山の専門学校で学ぶことに。 学校では吹きガラスからカットガラスまで、さまざまなガラス技術を学んだそうです。 「吹きガラスは時間との戦い。熱したガラスはすぐに固まってしまうので、臨機応変に素早く作業する必要があるんです。まさに体育会系ですね。 一方、カットガラスはもっと計画的に、一つひとつの線と向き合いながら進められます。もし失敗しても、ある程度はやり直せる余地がある。 僕はどちらかというと正確に、自分のペースで納得いくまで作り込みたいタイプなので、カットガラスの方が性に合っていると感じました。入学当初から、カットガラスをやりたいという気持ちはブレなかったですね」 富山の専門学校では、チェコから来た先生に教わる機会もありました。 その先生が見せてくれた古い技術書が印象的だったそうです。
実際に技術書を見せていただくと、基本的なカットのパターンがABCと順に解説されています。 パターンの積み重ねや組み合わせにより、美しいデザインが生まれることが伝わってきました。 【光をデザインする 】h collectionの設計哲学廣島さんのカットグラス製作は、驚くほど精密な設計図をもとに作られます。 見せていただいた図面には、グラスの円周が24等分され、そこに幾何学的な線がミリ単位でびっしりと描き込まれていました。
「例えば、ロックグラスにパターンを入れる場合、まずはグラスの高さと厚みを入念に確認します。 ロックグラスは底の部分に厚みがあるので、そこに深いカットを入れることで光が溜まり、キラキラと豊かな表情を見せてくれるんですよ」 デザインで意識していることを伺ってみました。 「デザインのパターンとして、江戸切子や薩摩切子に見られる伝統的なデザインは、着物などのように、連続する模様の美しさを追求しているものが多いのですね」
「一方、チェコなどのカットガラスは、シンプルで大胆なカットを部分的に入れることで、ガラスそのものの重厚感や透明度を際立たせています」
「私の場合は、それぞれの技法の歴史や美意識を尊重しながら、ガラス素材の持つ透明感や光の反射を引き出し、現代の生活空間に自然と溶け込むようなデザインを心がけています」 【一筋の線に命を吹き込む 】カッティングと磨きの技デザインの設計図が完成すると、いよいよガラスに命を吹き込む工程です。 まずは油性ペンで、ガラスに直接下書きを描いていきます。
一本一本慎重に。 この下書きが、正確なカットと輝きにつながるのです。
下書きが終わると、ガラスを加工する研磨ホイールが回転するグラインダーの前に座り、カット作業に入ります。
「まずは荒削りから。私たちは『あらずり』と呼んでいます。ガラスの厚みのある部分に、しっかりと深く切り込んでいくんです」 廣島さんが、ガラスをホイールに押し当てると、「シャーーーッ」という小気味よい音と共に、ガラスの表面が削られていきます。 その表情は真剣そのもの。 「削るときは、ぐっと押し当てるような感じで力を入れるんです。特に最初の荒削りは力が必要なんですよ。粗削りで深さを出した後は、工具を変えて細かく仕上げていきます」 人工ダイヤモンドが埋め込まれたホイールは、その形や大きさもさまざま。 表現したい線や模様に合わせて、使い分けるそうです。
「24等分の線に沿って削っていくとき、細い線は最初から一度で仕上げることもありますが、太いカットのときは間隔を空けてから徐々につなげていきます」
細い線や小さなカーブ、点などを削るための工具もあり、用途に応じて使い分けられています。 カットが終わると、次は2段階ある磨き工程です。 「基本的には、前日に下書きを全部描いておき、1日目でカットを終わらせます。2日目から磨きに入って、合計5日間で完成させるという流れですね。 磨きにはウレタン製のパッドを使います。使いやすいように、自分でカスタマイズしながら使っています」
磨いているとガラスが熱をもつので、水を度々つけるようにしながら、熱で割れないように細心の注意を払って作業しているそうです。
カットした部分を磨くと、曇りが取れて美しく輝くように(左のグラスが磨いた後)。
「工場で大量生産するときは『酸磨き』という薬品処理で磨くこともありますが、私の工房では一つひとつ、手で磨き上げます。 時間も手間もかかりますが、削った面に少しずつ光沢が出てきて、綺麗になっていく過程が好きなんです」 グラスに描かれた線を一本一本丁寧に磨き上げていくことで、美しい輝きが生み出されているのですね。 クリスタルガラスとソーダガラスの違いと魅力実は、ガラス製品といっても、素材によって特徴が大きく異なるそうです。 廣島さんに違いを教えていただきました。 「クリスタルガラスは、基本的に鉛が入っているので重量感があり、叩くと「キーン」という金属的な音がするんです。 日本では、「高い透明度」「重量感」「澄んだ音色(音の余韻)」がクリスタルガラスの条件になっています」
一方、私たちの生活に身近な、鉛を含まないソーダガラスは、軽くて傷つきにくく丈夫だそうです。 金属的な音はしませんが、衝撃や傷に強いので、普段使いのグラスや食器に向いているとのこと。
「クリスタルガラスは繊細なので、衝撃や温度変化にはあまり強くありません。 しかし、ガラスの中でも特に輝きが強く、カット面が美しく光を反射するため、高級食器や工芸品に多く使われています。 美しさを楽しみ、特別感を演出するのに最適なガラスですね」 ソーダガラスとクリスタルガラスの音の違い 人生を彩るギフトにh collectionのカットグラスは、結婚祝いや退職祝い、特別な記念日など、人生の節目を彩るギフトとして選ばれることが多いそうです。 「自分ではなかなか買えないけれど、贈り物でいただくとすごく嬉しい」というお客様の声も聞かれるとか。 店内に並んでいるさまざまなカットグラスを見ながら、特に人気の商品をお聞きしました。 「結婚祝いや記念日のプレゼントとしては、キラキラと輝くクリスタルの商品が人気です。 特に、シャインとレイヤーの組み合わせが人気ですね」
シャイン
レイヤー 「最近は引き出物でも、相手に合わせた組み合わせを希望されることが増えています。『この組み合わせを10セット』など、お客様のニーズに合わせて製作していますね」
また、ギフト以外に、日常使いや従来の用途以外にも使われているそうです。 例えば、足付きの「ラージステムグラス」は、ワイングラスとしてだけでなく、ホテルでウォーターグラスとして使われているとのこと。
ラージステムグラス「セレモニー」 「最近はお酒をあまり飲まない方も多く、ヨーグルトやパフェなど、デザートグラスとしても使われていますね ステムグラスは、持ち手部分が短く倒れにくいので、より日常的に使いやすくなっています。 独立と挑戦の道のり。「職人と作家」として歩む富山の専門学校を卒業した後、地元の石川にある工房で14年間働き、その後独立されたという廣島さん。 独立を決断したきっかけは何だったのでしょうか。 「地元に戻ってガラス工房で働きながら、2年目くらいから自分の制作活動もしていたんです。でも両方やるとなると休みなしの生活で。 30代前半になってそろそろどちらかに集中しようと考えるようになり、結婚のタイミングも重なって、思い切って独立することにしました」
独立後の歩みは、順調だったのでしょうか。 「最初の1年は本当に大変でした。前職の工房で流れを見ていたので、ある程度の見通しは立てられましたが、仕事の注文を取るところが大変でしたね。 はじめは、知り合いが引き出物などを注文してくれたり、口コミで少しずつ注文が入るようになったりといった感じでした。 展示会にも出ながら、独立から1〜2年経ったあたりで、ようやく『やっていけるかも』と思えるようになりました」
2017年の独立後、2019年に直営店を立ち上げた廣島さんは、「職人」として定番のカットグラスを作りつつ、「作家」としての活動も続けています。
吹きガラスの作家と図面で細かくやり取りを重ね、互いの技術と感性をぶつけ合いながら、2年に一度、作品発表会を開催しているそうです。 「気に入ったグラスを長く愛用してもらいたい」「お客様が何年後かに注文しても、同じものが買えるという状態を作りたかったんです」 定番の商品を作り続ける理由を伺うと、カットグラスを手に取ってみつめながら廣島さんが話してくれました。
「気に入ったものって、長い間使っていると、どうしても壊れてしまうじゃないですか。特に好きなものだと、同じものが欲しいな、と私も思ってしまうんですよね。 『あのグラスがまた欲しい』とお客様が思ったときに、いつでもお届けできるのが一番だと思っているので、定番のデザインを注文販売で作り続けています」 私たち日本いいもの屋の考えも廣島さんと同じ、いいものは永く使い続けたい。これまでご紹介した商品は基本的にはずっとご紹介続けています。
「手にしていただいた方に、ほっと一日の疲れをいやしたいときや、特別な瞬間に寄り添える器として使っていただけると嬉しいですね」 h collectionのカットグラスは、これからも使う人の日常に寄り添い、長く愛され続けていくのでしょうね。 作家でありながら、職人的な面も持つ廣島さん。 貴重なお話をありがとうございました。
左はお店の商品セレクトも担当する奥様、右は廣島さん
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