ブランド紹介

clife / 宇内金属工業


clife (クリフ) クリフ

clife / クリフ

金属、革を使用した雑貨で心地良い日々を生み出すライフスタイルブランド。 私たちの仕事は『リラックスした日常』をテーマに、あなたの日々の暮らしをほんの少し心地良くする事。
メイドインジャパン・メイドインオオサカ。金属加工技術とレザークラフト技術、デザインの力で人々の気持ちに寄り添う製品を提案。





clife (クリフ) / 宇内金属工業 取材記



みなさんは、使えば使うほど魅力が増していく“経年変化”という言葉をご存じでしょうか。
本革や金属、木材、デニム生地などをイメージしていただくと分かりやすいと思いますが、長い時間をかけて使い込むことで、色や質感が変化することを指します。
使う人の個性によってその変化がひとつひとつ異なることから、「育てる」と表現されることもありますね。

当店でも経年変化が楽しめるアイテムをたくさん取り扱っていますが、なかでも今回は、革と金属を組み合わせてオリジナル商品を生み出す「宇内(うない)金属工業」にお邪魔しました。

訪れたのは、大阪市東成区。
製造業が多く、モノづくりが盛んな地域のひとつです。
clife (クリフ)
お話をお伺いしたのは、装身具事業部企画課副部長の中村 拓也さん(右)と、企画・営業の石原 実千瑠さん(左)です。
clife (クリフ)
宇内金属の自社ブランド「clife (クリフ)」では、さまざまな商品を展開しています。
clife (クリフ)
clife (クリフ)
すべて社内で一貫生産されており、機能的ながらユニークなデザイン性と、素材へのこだわりが魅力です。
clife (クリフ)
今回の取材では、その誕生秘話から商品に込められた想い、製造現場の様子までたっぷりお届けします。


培われた、デザインの経験
clife (クリフ)の商品は、他の革小物ブランドとはひと味違う、個性的なデザインが目を引きます。
これらをすべてデザインし、形にしてきたのが中村さんです。
でも実は、最初から現在のような商品を専門に作ってきたわけではないそう。

「僕が20代で入社した時は、毎日ベルトのバックルのデザインばっかりやってました」と中村さん。
clife (クリフ)
当時はまだ、物作りも販売もすべて国内で完結していた時代。
日本人が使う物は、日本人が作って、日本人が販売するのが当たり前でした。
「ところがいつの頃からか、海外に買い付けに行ったり、工場が移転するようになったりして、徐々に国内産業が衰退していったんです」

時代の流れにあわせて、中村さんの仕事も少しずつ変わっていきます。
今までは日本製のバックルだけだったのが、台湾製のバックルもデザインするようになり、また数年後にはバックルだけでなくベルト全体のデザインにも携わるように。
clife (クリフ)
さらにはお財布もデザインするようになり、どんどん仕事の幅が広がっていきました。


モノ作りへの、熱い想い
「特に財布のデザインって、構造上どうなっているか、わりと緻密に設計していかないと、つじつまが合わなくなってくるんですよ」と中村さん。
「この財布ってどういう構造をしているんだろう」というのを現物を見ながらじっくり調べ、紙を使って自分で財布を試作し、それをお客さんに見せながら製品にしていったそう。
「そうやって設計のノウハウみたいなものを自分の中で作っていけたのが、30代の頃でしたね」と中村さん。
ところが、その状況もまた少しずつ変わっていきます。
clife (クリフ)
「直接中国に工場を持つような会社さんが出てきたり、金具をもっと安く海外で作って販売する業者さんもどんどん増えはじめて。流通経路の中で、少しずつうちの仕事が減ってきたんです」
中村さんが40代の頃には、デザインの仕事が急速になくなってしまったそう。

「その頃の僕は暇になってきたんで、会社のこととか仕事のこととか、 自分の関わってることに関して、色々深く考えていました」と中村さん。
会社の中で製品のデザインに携わってはいるけれど、実際に製品を作っているのはメーカーさんで自分じゃない。
もともとモノ作りに興味があった中村さんは、もっとモノ作りに関わりたいという気持ちが高まり、仕事とは別の趣味として、カバンの製作教室に通い始めます。

ここが、中村さんのすごいところです。
普通は自分の仕事が減ってしまうと意欲も落ちてしまうものですが、中村さんの探究心は尽きません。
やっぱり“モノ作りが好き”という想いが、根底にあるからでしょうね。
「どんな形のパーツが組み合わさって、この形になっているか。バラバラに開くとどういう形をしてるか。そういうのを考えるのがわりと好きで。頭ん中でずっとシミュレーションしたりしています」


転機となった、カバン製作
「カバン教室に通っているときが、『人生の中でいちばん楽しい!』っていうくらい楽しかったです」と笑顔で語る中村さん。
できることが増えてスキルがあがってくると、今まで趣味でしていたカバン作りを会社の仕事に生かせないかと考えるようになります。

「僕の仕事も減ってきていたし、このままこの状態でいるのは良くないな、と。でも自分にできることっていったらカバン作りくらいだったんで、 じゃあ会社の中で1回カバンを作ってみようと思って、Caramel(キャラメル)というブランドを立ち上げたんです」
clife (クリフ)
自社でブランドを立ち上げるのはまったくはじめてのことだけに、社内で反対する意見などはなかったのでしょうか。
「わりと自由にさせてもらえたんで、その点はとても恵まれていました。『あんまり無茶するな』とは言われましたけど(笑)」と中村さん。

宇内金属は、エアコンや自動車の部材といった工業製品を手掛ける事業部がメインで、中村さんが所属する事業部だけがファッションにまつわるものを手掛けるちょっと特殊な立ち位置だったことから、ブランドに関することは中村さんにすべて任されていたとか。


「金属 × 革」で、独自の色を
Caramelは中村さんがカバンを作り、販路も色々探しながらやっていたのですが、1人で手掛けていたため「もっと伸ばしていこう」と思っても、量産できないのが難点でした。

「もうちょっと量産に向いてる製品を作りたいなと思いました。うちはもともと金属加工会社なんで、どうせならその金具と革を組み合わせたブランドを作ったらいいんじゃないか、と」
clife (クリフ)
一般的に、金属加工の会社は金属加工ばかり行いますし、革製品を作る会社は革製品の製造ばかり行います。
「うちなら両方できるから、自分たちらしいものができるのかなと思って。金属と革を使って、自分たちでデザインからスタートして、制作まで全部やっちゃう。他のメーカーさんが真似したくてもできないブランドになると思ったんです」

こうして誕生したのが、clife (クリフ)です。


--- ブランドの惹かれたポイント --- 代表 裏家
私も実はこういう背景・ストーリーにとても惹かれました。
革製品を好きな方はとても多いので、日本いいもの屋でもご紹介できるような革製品ブランドはないかな?と探していました。

革製品という分野は作家さんも多くいる分野ですし、作ることそのものはそれほどハードルが高くありません。ですので、素敵なデザインの革製品は沢山見つかるのですが、「日本のものづくりを伝える」というお店のコンセプトにも合ったブランドがなかなか無かったのです。

でもclife (クリフ)は全然違った。金属加工をスタート地点にしています。金属部分が軸にあって革製品を生み出すブランドは知る限り他にはありませんでした!

成り立ちが特殊なので誕生する商品にも特徴があります。金属加工が一からできるので、金属パーツの素材や形状や加工方法でもこだわることができる。他に真似できないパーツがあるので、人とは違うものを探す人にはぴったり。

実は私たちの拠点も東成区。こんなに近くに探していたものがあったとは、、まさに灯台下暗しでした。


金属だけじゃない。革にも永く使える良いものを
clife (クリフ)は、金属部分だけでなく革素材にも並々ならぬこだわりを持っています。
製品に使う革は、すべて「ピットなめし」という製法で作られたもの。
「なめし」とは、牛の原皮が腐ったり変質したりしないように加工する作業のこと。
なめすことで原皮が革へと変化し、私たちが使う革製品になっていくのです。

なめす作業には、植物の渋であるタンニンを使用します。
一般的には「ドラムなめし」といって、ドラム槽に薬剤と原皮を入れてぐるぐると回しながら短時間でなめす製法が主流です。
一方「ピットなめし」は、プールのような槽に原皮をつけて、ゆっくり時間をかけながら徐々になめしていく製法です。
clife (クリフ)
中村さんはなぜ、ピットなめしにこだわるのでしょうか。
「ドラム式洗濯機をイメージすると分かりやすいのですが、ぐるぐる回すと服の繊維がほぐれるじゃないですか。原皮も繊維が密に絡み合ってるものなんで、やっぱりほぐれちゃうんですよ。でも、ピットなめしだとゆっくりなめしていくので繊維がほぐれず、粘り強くて丈夫な革になるんです」

実際にピットなめしの革を長く使えば使うほど、その良さが分かってくるのだとか。丈夫で美しい、ピットなめし。
clife (クリフ)
「世界でも日本でも、ビットなめしをやっているところって昔はたくさんあったらしいんですけど、 やっぱり手間と時間がかかるんで、どんどんなくなっていって。今、ビットなめしっていったら、日本だけじゃなく、世界でもかなり希少なんです」
そんな貴重なピットなめしを、中村さんは姫路にあるタンナー(製革業者)さんから仕入れています。
実際に姫路まで足を運んで話を聞き、その技術や勤勉さに惚れ込んで、ここの革を使うことに決めたそうです。


味わい深い、真鍮の魅力
製品に使われる金属パーツは、可能な限り、真鍮製のパーツにメッキをほどこさずに使用しています。
そのため、手で触れるとその水分や油分により、アンティーク風な深みを感じさせる独特の色に変化していきます。
clife (クリフ)
こちらの商品は、本体の革も金具の真鍮もイイ感じの色に経年変化したもの。革も真鍮も使うほど経年変化を愉しめる素材。clife (クリフ)の商品は使えば使うほど『私だけの愛用品』へと変化していくので、愛着もひとしおです。


日常に寄りそう、clife (クリフ)のアイテム
ここからは、clife (クリフ)の代表的なアイテムをご紹介しましょう。
clife (クリフ)
GRASPは、シンプルなのにどこか気の利いたデザインが魅力。
カラビナのシャープなフォルムがかっこよく、他とは少し違うカラビナを探す男性からの支持が多いとか。さすが金属加工の会社ですね。
パンツのベルトループに付けても上品にまとまります。
clife (クリフ)
エマージェンシーウォレットONEは、他ではなかなか見かけないユニークな形。
これは財布を考えてデザインしたというより、「お金をどう収納したら小さく持てるか」という発想から生まれたのだそう。

キャッシュレス時代の今、現金しか使えないという場面に備えるのにぴったりですね。
clife (クリフ)
「財布と思って持たれると、正直ちょっと使い勝手が悪い(笑)。あくまで緊急用なんで、ギリギリ我慢できる…くらいのところを意識して作りました」と中村さん。

こうしてみると、clife (クリフ)の商品は、革を開くとひとつになる構造が多い気がしますね。
「そうですね。パーツ数を減らし、ひとつの革をたたむことによってカード入れや小銭入れを作ったりしています。シンプルを突き詰めて無駄なところなくしていった結果、『これで事足りるな』と」

いい素材を使って、シンプルに作る。
当たり前のようでいて、とても難しいことです。

「すごくハイテクな機械で製造してるわけでもないし。革のところももっと上手なメーカーさんもたくさんあるんですけど。簡単に作っているようで、ちょっとした仕立て方とか、その構造とか、デザインのまとまりとかにめちゃめちゃこだわりが詰まってる。そこに気づいてもらえたら嬉しいです」と中村さん。


clife (クリフ)が生まれる、製造現場
では、ここからは実際の製造現場を見せていただきましょう。
まずは、金属パーツを作る工場で、カラビナを作る工程を見せていただきました。
clife (クリフ)
最初に、大きな1枚の板状になっている真鍮を、製品の取り分ぐらいの寸法に細長く裁断していきます。
clife (クリフ)
clife (クリフ)
こちらは、カラビナのパーツにあわせてカットした状態です。
clife (クリフ)
clife (クリフ)
先ほど裁断した真鍮を機械でプレスし、製品の形に抜いていきます。
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製品を抜いたあとがこちら。
先に板に小さい穴をあけて、そこを機械にはめ込んでいきながらプレスすることで、ズレないようになっているそうです。
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ちなみに、抜き終わった材料は一か所に集められスクラップ屋さんへ。
こうやって見ると、真鍮が多いですね。
「真鍮は加工しやすいし、プレスで柄も出やすい。研磨やメッキもやりやすいので、よく使われる素材です」
clife (クリフ)
先ほどの型抜きでは上から圧をかけて抜くので、どうしてもカラビナの裏にあたる下側が膨らみます。
これを表も裏も同じ状態にしたいので、もう1度プレスして平らにします。
clife (クリフ)
画像だと少し分かりにくいかもしれませんが、左が平らになった状態、右が平らにする前の状態です。
こうやって細部まできれいにしていくのが、こだわりのポイントですね。
clife (クリフ)
このあと、ブランド名や「MADE IN JAPAN」等の文字をプレスして刻印します。
プレス作業はここで終わり、続いては研磨です。
clife (クリフ)
機械の中にカラビナと石と水、洗剤のような液体を入れ、1時間半ほどぐるぐると回転させて研磨します。
機械の中にある白い物体は、大きな泡!
本当に洗濯機のようでした。
clife (クリフ)
研磨したばかりのピカピカのカラビナが、画像の奥側になります。
ちなみに手前はスタッフさんの私物で、3年ほど使った状態だそう。
こうして並べると、真鍮がイイ感じに変色してるのが分かりますね。

続いては、革の裁断や縫製、組み立て作業なども見学させていただきました。
clife (クリフ)
clife (クリフ)
clife (クリフ)
バネをつけたり、カシメを付けたりといった作業も、社内で一つ一つ丁寧に行います。
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GRASPだけは、カシメを潰してフラットにしたデザインのため、圧が強めにかかる機械を使います。
カシメひとつとっても、こだわりがすごいですね。


clife (クリフ)のこだわりを、これからも
最後に今後の展開について、お二人それぞれにお伺いします。
まずは、入社10ヶ月の石原さんです。
これからどんな商品を作っていきたいか、思われてるところってありますか。

「男女関係なくどちらでも使える、ユニセックスなものとか。革製品だけでなくて、もうちょっと金属に特化したものとか。色々やってみたいですね」
石原さんは、前職が服関係のお仕事だったそうです。
「以前は、トレンドを追って勉強してるような感じだったんですけど。逆に今は、流行りのものとか、まわりの子たちが求めてるものとかを吸収して、clife (クリフ)に反映していけたらいいなと思います」
clife (クリフ)
石原さんのように、客観的に見てもらえるスタッフがいると助かりますね。
「そうですね。石原さんには、主にSNS関係を任せてます。今までは、考える仕事って僕1人でやってたんですけど。そこに彼女が入ってきて、一緒にこのブランドを作っていこうとしてて。相談したことに対してわりと的確に答えてくれるんで、頼りにしてます」と中村さん。
そういう意味では、またここから変化しつつ、ブランドをしっかり伸ばしていければという感じでしょうか。
「そうですね。今までずっと、手探りで考えながらやってきたんで。これからも多分、それをずっと続けていくんでしょうけど、やっぱりブランドを成長させたいっていう欲が最近は出てきてますね」
clife (クリフ)
「僕しか考えられないデザインのところは、しっかり考えて考えて。他のブランドがやらないデザインや形っていうのは、絶対外さない方がいい。そこを外しちゃうとブランドの意味がなくなってくると思うんでね」

技術としてはシンプルであっても、簡単には真似できないこだわりがぎゅっと詰まっている。
自分の持ち物にこだわりのある方には、きっと魅力を感じていただけるブランドだと思います。

宇内金属工業の皆さま、取材にご協力いただき、誠に有難うございました。









clife (クリフ)の商品一覧




クリフ カラビナ 財布 小銭入れ キーケース

カラビナキーリング | グラスプ





クリフ カラビナ 財布 小銭入れ キーケース

キーケース | スティル





クリフ カラビナ 財布 小銭入れ キーケース

カラビナ付き小銭入れ | ファウンド





クリフ カラビナ 財布 小銭入れ キーケース

エマージェンシーウォレット | ONE カラビナver





クリフ カラビナ 財布 小銭入れ キーケース

エマージェンシーウォレット | ONE キーリングver








槙田商店


槙田商店 ブランド

1866年江戸末期に創業。織物の製造から傘の組み立てまで一貫して生産することができる、世界で唯一の老舗織物工場。私達の作る傘は、すべて織生地です。服地づくりで培われた技術と傘を組み合わせることで他にはない傘を生み出しています。日本最高峰の職人が、伝統技術をもって、「あなただけの特別な傘」を実現します。
人生を添い遂げたくなる傘をお楽しみください。





槙田商店の商品一覧




槙田商店 男性用 紳士用 長傘 tie

紳士用長傘 Tie ストライプブラック


槙田商店 男性用 紳士用 長傘 tie

紳士用長傘 Tie ストライプ裏地ネイビー


槙田商店 男性用 紳士用 折りたたみ傘 tie

紳士用折りたたみ傘 Tie ストライプブラック


槙田商店 男性用 紳士用 折りたたみ傘 tie

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槙田商店 晴雨兼用 日本製傘スティグリンドベリ

日本製長傘 晴雨兼用 | スティグ・リンドベリ


槙田商店 晴雨兼用 日本製折りたたみ傘 スティグリンドベリ

日本製折りたたみ傘 晴雨兼用 | スティグ・リンドベリ








KUSU HANDMADE


kusu ブランド紹介

「優しい」ということは、強いことでも弱いことでもなく 「優れている」ということ。古来、独特の自然香で人々を守り、 癒してくれるクスノキは、暮らしに優しい木です。
KUSU HANDMADEは九州生まれの楠(くすのき)を もっと暮らしの中へ届けるために誕生しました。 クスノキが持つ天然成分100%の防虫・消臭の力や、 安らぎの香りを是非味わってみてください。





KUSU HANDMADE 取材記



古くから「虫除けの木」として知られている楠(クスノキ)。九州など暖かい地域に自生する香木です。枝や葉から抽出された天然の「カンフル(樟脳)」は防虫や消臭の効果、リラックス効果があり、古くから防虫剤や医薬品などに使われてきました。
今回は、そんな楠の特長を生かした製品をつくるアロマ雑貨ブランド「KUSU HANDMADE(クスハンドメイド)」を展開する株式会社中村にお邪魔しました。
九州産の楠を使った暮らしに優しい製品を数々と生み出している「KUSU HANDMADE」の誕生秘話やブランドの想いを紹介します。
KUSU HANDMADE 取材記
訪れたのは佐賀県神埼市。会社に到着して車を降りると、屋外にも関わらず心地の良い爽やかな木の香りが漂ってきました。
取材に応えてくれたのは、代表取締役社長の中村光予子さんです。
KUSU HANDMADE 取材記


代々受け継がれた楠で健康をつくる

そもそもなぜ楠を使った製品をつくるようになったのでしょうか。歴史は中村さんの曽祖父までさかのぼります。
中村さんの曽祖父は約70年前、家具の街として知られる福岡県大川市で木材を切り出す木挽き(こびき)をしていました。「当時は、婚礼家具として楠を使ったタンスが主流だったため、ひいおじいちゃんはクスの原木を中心に切って販売していました」(中村さん)。
1974年に法人化し、時代とともに事業内容は変化しつつも一貫して楠を扱い、中村さんの父親の代からは建材を製造販売するようになりました。
ちょうど父親が建材を扱うようになった約30年前は、建築業界で木の建材から安くて施工が簡単な建材が流通するようになった時期。化学物質の影響で「シックハウス症候群」が流行していました。“健康オタク”という中村さんの父親は「建材で家も人も健康になれる。住まいから健康でなければならない」という思いから「全て天然素材を使ってお家づくりをする」というコンセプトで建材の製造販売を始めたそうです。
KUSU HANDMADE 取材記
「でも、実は楠は建材に向いていないんです」と中村さん。油分が多く水に強いという強みがある一方、山の中に自生することが多い楠は真っ直ぐ育たずぐねぐねと曲がりながら成長する特性があり、使える範囲がものすごく少ないそうです。そのため、たくさんの端材が出てしまうという問題がありました。
KUSU HANDMADE 取材記
さらに、建材としてよく使われる杉や檜と違って、曲がったり割れたりするのを防止するために人工乾燥ではなく天然乾燥をする必要があり、材料を入手しても乾燥に3-4年ほど時間がかかってしまうのです。そうなるとコストも高くかかります。
そこで端材をうまく活用できないか考えていた時、父親の知り合いから防虫剤にしてはどうかというヒントを得て、後のブランドの代表商品となるエコブロックが誕生しました。
エコブロックは切り落とされてしまう木の皮に近い耳の部分をブロックにして、天然の防虫剤や芳香剤として使うことができる商品です。香りが弱くなった時は楠から抽出されたカンフル(樟脳)オイルを塗って、繰り返し使うことができます。
KUSU HANDMADE 取材記
初めは父親が商品開発を進めていましたが「なんせおじさんの感性で作るのでうまくいかず…」と笑う中村さん。いくらアイディアがよくても若い人には届かなかったそうです。そこで、助けを求められた中村さんと中村さんの妹が、当時していた別の仕事をしながらも商品の販売企画に携わるようになり「KUSU HANDMADE」というブランドが誕生しました。
ちょうどメディアでは「エコ」という言葉が取り上げられはじめた時期だったため、天然の端材を活用し繰り返し使えるエコブロックはまさに環境にも人にも優しい商品として注目され、人々の手に届くようになりました。


うちにしかできない自然を使ったものづくり

一見順調に見えますが、ブランドが立ち上がるまでには大変な苦労もあったようです。
そもそもエコブロックの「エコ」は、父親が商標をとっていた「絵鼓(えこ)」という和紙壁紙から名付けられました。和紙が呼吸をすることで壁から部屋の空気を綺麗にするという商品で、何億円もの開発費をかけて開発されたそうです。
KUSU HANDMADE 取材記
「しかし、これが大失敗でして…」と中村さん。エコブームに乗った大手企業が後から同じような商品を販売したことで、少しでも安く手に入る大手に客が流れてしまいました。
そこで得た教訓が「大手に真似されるものを中小零細はつくってはいけない」ということ。「大手に大負けした経験から『うちが持っている楠の素材を使って誰にも真似されないものをつくろう』、そして『自然のもので人の役に立つ、繰り返し使えるものをつくろう』という思いがエコブロックの誕生につながりました」と中村さんは語ってくれました。
中村さんが社長になってからは、建材や住宅内装の事業を他社に譲渡し、現在は楠を使ったアロマ雑貨を中心に事業を展開しています。


最後まで無駄なく活用する

「KUSU HANDMADE」は九州産の楠を使った芳香や消臭グッズ以外に楠の効果を生かした掃除用品や洗濯用品、ハンガーなど生活に寄り添う商品を70種類ほど扱っています。材料となる九州産の楠は、伐採業者から捨てられるはずだったものを買い取っているため、商品のために木を切ることはありません。
KUSU HANDMADE 取材記
樟脳とオイルは自社独自の機械で蒸留して抽出しています。環境と人に優しいことはもちろん、「身近に使えるもの」「自分たちが買いたいもの」などを基準に社内で話し合い、年に3つほど新商品を開発しています。
KUSU HANDMADE 取材記
今年の2月には樟脳とオイルを抽出した後の楠チップを活用した炭の消臭アイテム「kususumi - 楠炭」が誕生。これまではスペースの問題から産業廃棄物として処理せざるを得なかった楠チップをどうにか全て活用できないか考え、独自の炭化装置を導入して100%再利用できるようになりました。
KUSU HANDMADE 取材記
この商品は消臭剤として使った後は土壌改良剤として再利用することができます。炭化する際に木が吸収した二酸化炭素(CO2)を炭に閉じ込めるため、そこから二度とCO2が排出されない仕組みになっており、環境に貢献できる商品です。
バイオ炭と言われるもので、バイオ炭を農地に肥料として撒くことでCO2削減につながるため、中村さんは今後バイオ炭を農家に広め、温室効果ガスの削減目標がある企業などに削減した分のCO2をクレジットとして買い取ってもらう国のJクレジット制度に活用してもらうことを目指しているそうです。そのためにも「まずは多くの人に楠炭を知ってもらうところからです」と話していました。農家にも環境にも暮らしにも役立つ商品の可能性に胸が膨らみます。
KUSU HANDMADE 取材記


樟脳がゼロから100になるまで

ここからは、会社の敷地内にあるオリジナルの機械や作業風景を見学させてもらいました。
KUSU HANDMADE 取材記
まずは「KUSU HANDMADE」の看板商品である樟脳とオイルを抽出する作業場です。作業場の扉が開くと、さらに強くて優しい樟脳の香りが体を包んでくれました。
「機械は一から自分たちで考えて、機械屋さんと一緒に作りました」と中村さん。もともと他社から樟脳を購入していましたが、12年前に自社の機械を取り入れました。製造の手順が確立するまでは検証の繰り返し。蒸留時間や温度など試行錯誤を重ねながら、やっとの思いでターゲットとする成分の抽出まで辿り着くことができたそうです。ブランドを立ち上げて以降「一番大変でした」と明かしてくれました。国内で樟脳を生産する企業は4軒のみだと言われていますが、今ではこの努力があったおかげで事業が成長し、安定した生産量を保つことができるようになりました。
KUSU HANDMADE 取材記
中村さんが楠のチップを見せてくれました。このチップから樟脳とオイルが抽出されます。
KUSU HANDMADE 取材記
チップはまず独自の機械で水蒸気蒸留します。そうすると蒸気に成分が出てくるため、それを冷やすことで、冷却装に水分と固形成分(樟脳)とオイルが三層になって溜まっていくそうです。通常蒸留する時には冷却装までの間に螺旋状の管をつないで蒸気を冷やすことが多いですが、「KUSU HANDMADE」では管に樟脳が詰まらないよう、管を冷却装まで真っ直ぐつなぎ、冷却装で一気に冷やしているそうです。
KUSU HANDMADE 取材記
機械近くには樽に入ったカゴに真っ白な粉が溜まっていました。冷却装から取り出した水分と油分を絞る前の樟脳だそうです。樽の底には水分の上にオイルが浮いていました。樟脳は機械でプレスすることで純度100%の樟脳になります。プレスして出てきたオイルと水分は樽の底に溜まってものも含めて分離させ、オイルは製品にします。楠のチップから樟脳やオイルとして完成品になるまでは半月ほどかかるそうです。
KUSU HANDMADE 取材記
純度100%になった樟脳は白くて固いかたまり状になっていましたが、指で少しほぐすとサラサラの粉になりました。抽出率は多くても1%、普段は0.5~1%弱のため3kgの樟脳をとるためには少なくとも300kg分の楠が必要だということになります。市場ではいろんな樟脳が流通していますが、「ここのは間違いなく楠100%の樟脳です」と話す中村さんからは商品に対する誇りが見えました。


炭化することで環境に貢献

蒸留した後のチップを炭にするまでの過程も案内してもらいました。
KUSU HANDMADE 取材記
蒸留した後の楠チップは大体年間180トン出るそうですが、今までは半分を造園屋さんに販売し、残りの半分は産業廃棄物に出していました。しかし「やっぱりもったいなくって」と中村さん。場所を占領してしまうため仕方なく処分していましたが、炭にすることで100%リサイクルできるようになりました。
KUSU HANDMADE 取材記
炭窯も機械屋さんと相談しながらオリジナルで作ったそうです。改良に改良を重ね、現在の形に辿りつきました。会社の周辺には住宅があるため、煙も匂いも外に出ないよう機械で処理しています。
KUSU HANDMADE 取材記
炭にするためにはチップを溜めたバスケットを丸ごと入れて、ある程度燃え始めたら空気穴を閉じて低酸素状態で蒸し焼きにします。炭窯に入れて炭になるまでは約1日かかるそうです。空気の入れ方や火の回し方にコツがいるため、完全な炭にするのは意外と難しかったそうで、中村さんは「初めは簡単につくれるだろうと思っていたが全然簡単じゃないと嘆いていました」と笑いながら振り返ってくれました。いろんな炭の商品が出回る中で「基本的な炭の効果だけでなく、環境に寄与できるバイオ炭として差別化を図っていきたい」とのことです。


一つずつ手作業で

最後に「KUSU HANDMADE」が生まれたきっかけとなったエコブロックを包装している現場にお邪魔しました。ここではブロックの焼印や包装、オイルの充填をします。
KUSU HANDMADE 取材記
従業員が一つずつ手作業でペーパークッションやオイルを木箱に詰めていっていました。商品は一般販売だけでなく、結婚式の引き出物や企業のノベルティなどにも活用されています。
KUSU HANDMADE 取材記
特にブロックの刻印は状況に合わせてカスタマイズできるため、オリジナルの印でつくってもらうこともできます。実用的で特別感もあるため、もらったら嬉しい製品ですね!
曽祖父の代から受け継がれた楠の特徴を知り尽くし、時代を先取りしながらも原点である天然素材をフルに活用して人にも環境にも「優しい」商品をつくり続ける株式会社中村。
取材を一通り終え、中村さんからにじみ出る会社と商品への誇りがどこから来るのか感じることができました。
中村さん、株式会社中村のみなさま、長時間にわたる取材にご協力いただき、ありがとうございました!







KUSU HANDMADEの商品一覧




KUSU HANDMADE カンフルオイル

くすのきカンフルオイル


KUSU HANDMADE カンフルオイル

くすのきエコブロック


KUSU HANDMADE カンフルオイル

くすのきアロマディッシュ


KUSU HANDMADE 虫よけハーブスプレー

くすのき虫よけハーブスプレー


KUSU HANDMADE  くすのきカンフルパウダー(服を守る防虫剤)

くすのきカンフルパウダー(服を守る防虫剤)


KUSU HANDMADE  くすのきエアミスト

くすのきエアミスト


KUSU HANDMADE  楠炭ふりふり消臭剤 kususumi

楠炭ふりふり消臭剤 kususumi


KUSU HANDMADE  くすのきシャツハンガー

くすのきシャツハンガー


KUSU HANDMADE  くすのきジャケット/コートハンガー

くすのきジャケット/コートハンガー




Blanc Pa(ブランパ)/大館工芸社


Broom Craft

Blanc Pa(ブランパ)

曲げわっぱの材料の杉の外側の白い部分「シラタ」が使われず、残ってしまっていることに気づき、限りある資源である杉を余すことなく、どうにか生かしたいと試行錯誤を続けた結果、完成したのが大館工芸社のBlanc Pa(ブランパ) Blancは、フランス語で「白」を意味します。 「シラタ」への思いを「白」というブランド名に込めました。





Blanc Pa(ブランパ)/大館工芸社 取材記



木の温もりが漂うシンプルな曲線に、自然が織りなした木目がやさしく映える「曲げわっぱ」。最近は、弁当箱などを見かけることが増えましたが、実は1000年以上もの歴史をもつ日本の伝統的な工芸品です。
職人が杉の木の板から手作業で作り出す秋田県大館市の「大館曲げわっぱ」は、日本各地の曲物の中で唯一、国の伝統的工芸品に指定されています。
ブランパ 曲げわっぱ 大館工芸社
今回は、そんな大館市で65年間「曲げわっぱ」を作り続けてきた「大館工芸社」さんにお邪魔しました。

伝統を守りつつ、限られた資源を最大限活用しようと革新的な商品を届ける新しいブランド「Blanc Pa(ブランパ)」を立ち上げた想いも紹介します。
ブランパ 曲げわっぱ 大館工芸社
代表取締役の戸嶋さんにお話を伺いました。


移り変わる時代の中で求められる製品
元々は、雪国の子どもたちをイメージした三角のこけしのような民芸品や、灯篭などを作っていたという大館工芸社。紆余曲折を経て、昭和30年代から「曲げわっぱ」を作るようになりました。
地域で分業して作る会社が多い中、大館工芸社は独立して、全ての工程を自社の職人で担っています。
ブランパ 曲げわっぱ 大館工芸社
初めはお盆や茶筒から作り始め、次第に客の要望に応えようと弁当箱や器なども作り始めました。
見た目の美しさはもちろん、調湿効果もある「曲げわっぱ」は、時代がプラスチックに移り変わっても、「機能と見た目、両方で求められるようになってきた」と戸嶋さん。特に毎日のように使われる弁当箱は現在、大館工芸社の代表商品になりました。
ブランパ 曲げわっぱ 大館工芸社


伝統と革新
一般的に「曲物」と呼ばれる「曲げわっぱ」。地域によって呼び方は違いますが、平安時代(794〜1180年)にはすでに日本各地にあったとも言われています。
ブランパ 曲げわっぱ 大館工芸社
戸嶋さんが、大館市で見つかった推定100年〜150年前の弁当箱のレプリカを見せてくれました。基本的な形や作り方はほとんど一緒だということに驚きです。
ブランパ 曲げわっぱ 大館工芸社
大館工芸社は創業以来、秋田県の高齢杉を使って伝統的な技法で製品を作り続けてきました。
通常は丸太の中心の芯と、年輪の外側の白く若い部分のシラタ(白身)をのぞいた内側の赤い部分(赤身)だけを使って、一枚の板から作られる「曲げわっぱ」。しかし、それでは貴重な高齢樹材の約半分を捨ててしまうことになっていたそうです。

大館工芸社では樹齢100年から120年の杉を仕入れて製品を作っているため、「せっかくここまで育ったのに無駄にしてしまっている」という問題意識を長年もっていました。

そこで、今まで業界では「悪くなりやすい」として使われてこなかったシラタを生かした商品を生み出しました。それらを届けるために立ち上げたのが、新しいブランド「Blanc Pa(ブランパ)」です。
ブランパ 曲げわっぱ 大館工芸社
均一的であることを理想とし、シラタを使うことや個性的なデザインはタブーとされてきた伝統的な「曲げわっぱ」に対して、「Blanc Pa」では、土壌によって丸太の色が違うといった自然の個性を「ポジティブに捉え」、シラタも使った商品作りを進めています。

今までは、材料の入手の難しさから「(曲げわっぱは)マーケットとしてそんなに大きく広がりようがなかった」という戸嶋さん。
しかし、シラタを含めた個性的な素材もそのまま使うことで、近年入手しづらくなっている高齢杉のロスを減らし、作れる商品の数が増えました。
ブランパ 曲げわっぱ 大館工芸社
新しいブランドでも、木材の伝統的な曲げ方や職人は変わりません。むしろ、これまで避けられてきた部分を使うことにより、加工の難易度は上がったそうです。常識破りな取り組みに、戸嶋さんは「チャレンジです」と語っていました。

伝統を守りながらも挑戦を続ける大館工芸社ですが、従来の「曲げわっぱ」でも、新しいブランドでも共通する想いは「いいものを長く使ってもらいたい」ということでした。
そのため、どちらの商品も「リペア(修理)に力を入れている」と戸嶋さん。汚れや傷、欠けなど、できる限りリペアの対応を受け付けています。
ブランパ 曲げわっぱ 大館工芸社

ところで、「Blanc Pa」の由来はなんでしょう。
「Blanc(ブラン)はフランス語の「白」、Pa(パ)は「曲げわっぱ」の「ぱ」で、二つを合わせた造語」(戸嶋さん)だそうです。
ブランドは地元のデザイナーと手を組んで作り上げています。ここにも、大館工芸社の地元へのこだわりが見えました。

新しいブランドでは、若者や男性などターゲット層も広がっています。新しい商品の構想がどんどん練られているという「Blanc Pa」。ますます目が離せません。


杉へのこだわり
日本各地の工芸では、少子高齢化などによる後継者不足が問題になっていますが、戸嶋さんはこの業界の1番の課題を「材料の確保」だと語ります。杉の木は日本で多く植林されているのに、なぜでしょうか。
ブランパ 曲げわっぱ 大館工芸社
大館工芸社は創業当時から秋田県の杉の木にこだわってきました。なぜなら、日照時間や天候によって、年輪の幅が変わるためです。
生産量が全国一の宮崎県の杉の木は日に当たる時間が長く、秋田県の杉の木と比べて成長スピードが2倍ほど違うようですが、成長が早い分、年輪が広くなります。それに対して、「秋田、東北では厳しい寒さが続き、晴れる日が少ないことによって木の成長が遅く、(年輪が)ぎゅっとつまります」(戸嶋さん)。
ブランパ 曲げわっぱ 大館工芸社
「曲げわっぱ」に映える、細かく美しい木目は秋田県の杉の木ならではのものだったのですね。

確かに、その中で樹齢100年から120年ほどの木となると、かなり限られます。もう少し樹齢が若い木は使わないのでしょうか。
ブランパ 曲げわっぱ 大館工芸社
「曲げわっぱ」は丸太を縦に切った木の板から作りますが、丸太が太ければ太いほど幅の広い木材が取れるため、高さのある「曲げわっぱ」の製品を作ることができるそうです。
戸嶋さんは木材を示しながら、樹齢80年の杉でさえも「十分な高さが取れない」と教えてくれました。

長い年月がかかった自然の結晶に、職人の手の技が加わるからこそ、価値があるのだと感じました。


全ての工程を手作業で
ここからは曲げわっぱが製造されている工場にお邪魔してみましょう。
ブランパ 曲げわっぱ 大館工芸社
工場に足を踏み入れると、木材を機械で切る音が響いてきました。普段は30人ほどで役割分担しながら作業しているそうです。
ブランパ 曲げわっぱ 大館工芸社
湯気がたちのぼるエリアに近づくと、何枚にも重なる木材が、お風呂に入るようにお湯に浸かっていました。“湯船”の下では火が焚かれ、なかなかインパクトのある光景です。
これは、木材を曲げやすくするために90度ぐらいのお湯に1、2時間程度つけておく工程だそうです。
ブランパ 曲げわっぱ 大館工芸社
ブランパ 曲げわっぱ 大館工芸社
型と留め具が並んでいました。そして隣の台では、これらを使って固定された製作途中の弁当箱が並んでいました。
どのようにしてこの状態になるのでしょうか。実際に職人が曲げる場面を見せてもらいました。
ブランパ 曲げわっぱ 大館工芸社
お湯から取り出したばかりの湯気を立てている板を難なく触り、丁寧に手で包み込むように型に沿わせ、留め具をはめていきます。板の熱さを感じさせない無駄のない動きは、まさに職人技でした。

また、曲げた部分を接着する場面も案内してもらいました。こちらは企業秘密のため撮影NGです。桜皮で留めるスタイルは江戸時代から変わらないそうです。濃い茶色がパッキリと映えて、デザイン性もありました。
こちらは、大館工芸社で「伝統工芸士」という資格をもつ5人のうちの1人が作業をしていました。
ブランパ 曲げわっぱ 大館工芸社
ブランパ 曲げわっぱ 大館工芸社
ブランパ 曲げわっぱ 大館工芸社
その後、隙間がないよう底をはめ込み、丁寧に磨いて形を整えます。

仕上げはウレタン塗装です。
油物にも耐えられるよう塗っていきます。厚く塗りすぎても調湿効果の機能に蓋をしてしまい、薄すぎてもウレタンの効果が薄くなってしまうため、これも職人技です。網の目状に塗装して、除湿効果を保っているそうです。

一通り工程を見ましたが、実は板を曲げて形を作った後にかかる時間の方が長いことがわかりました。全てに共通することは、手作業でかなり手が込んだ作業であることです。
ブランパ 曲げわっぱ 大館工芸社
最後に商品が陳列されたスペースに戻ってきました。
床に使われている木材は、「曲げわっぱ」に使われなかった芯材。そして、製品が並ぶ台は樹齢250年の丸太。
解説を聞いた後だからか、上に並ぶ製品も含めて改めて見ると、長い年月を経てきた重みや、職人の変わらぬ技と想いがますます鮮明に伝わってきました。

戸嶋さん、大館工芸社のみなさま、長時間にわたる取材にご協力いただき、ありがとうございました!









Blanc Pa(ブランパ)の商品一覧




秋田杉の曲げわっぱ カップ ブランパ

秋田杉の曲げわっぱ カップ


秋田杉の曲げわっぱ カップ ブランパ

秋田杉の曲げわっぱ ディッシュ


秋田杉の曲げわっぱ カップ ブランパ

秋田杉の曲げわっぱ ボウル







人水 / JINSUI


人水 JINSUI ブランド紹介

JINSUIは日本一の常滑焼の急須の産地と知られる愛知県常滑市にございます。 品質が非常に高く、最高峰の急須を作っている産地の一つです。 職人の世界では、お茶を愉しむ時間の事を「時わすれ」と表現します。 そんな特別な「時」を楽しんで欲しいと願いを込めて急須。 江戸時代に創業し、常滑の良質な土と巧みな技術を現代まで受け継いできたJINSUIの新しい物づくりが此処にあります。




JINSUI / 人水 取材記



急須の生産量日本一、国内シェア9割を誇るのは愛知県常滑(とこなめ)市。
人水 JINSUI  常滑焼 急須
知多半島の中部西岸に位置する海と山に囲まれた自然豊かな街で、人気の観光スポット「やきもの散歩道」は、「美しい日本の歴史的風土準100選」にも選ばれています。
人水 JINSUI 常滑焼 急須
そして、常滑市の伝統工芸品「常滑焼」は、瀬戸、信楽、越前、丹波、備前と並ぶ「日本六古窯」に数えられる由緒ある焼き物で、「日本六古窯」は、2017年に文化庁が日本遺産(※)に認定されています。「日本六古窯」の中でも「常滑焼」の歴史はもっとも古く、1200年以上も前の平安時代まで遡るのだそう。
人水 JINSUI  常滑焼 急須
今回は、そんな歴史ある常滑焼の急須を作る「株式会社人水(JINSUI)」の社長 渡邉さんに話を聞きに行ってきました。ブランドを代表するオリジナル急須「TOKI」シリーズは、強さと繊細さを兼ね備え、凛とした空気を纏う美しい逸品です。
人水 JINSUI  常滑焼 急須
この取材を通して、常滑焼の急須に興味がわき、急須でお茶を飲んでみようと思っていただけたら嬉しいです。
※「日本遺産(Japan Heritage)」は地域の歴史的魅力や特色を通じて我が国の文化・伝統を語るストーリーを文化庁が認定するものです。ストーリーを語る上で欠かせない魅力溢れる有形や無形の様々な文化財群を,地域が主体となって総合的に整備・活用し,国内だけでなく海外へも戦略的に発信していくことにより,地域の活性化を図ることを目的としています。


独特な朱色が魅力の常滑焼
市内の人気観光スポット「やきもの散歩道」には、煙突や窯、工場などが点在。焼き物の壁や道が広がり、何とも不思議な景色を楽しむことができます。さらに、陶芸家の作品として招き猫が街のあちこちに展示され、焼き物コレクターはもちろん、写真愛好家や映えスポットとして若い世代の方からの人気も高まっています。
人水 JINSUI  常滑焼 急須
人水 JINSUI  常滑焼 急須
そんな常滑市の伝統工芸品が、独特な朱色が特徴の「常滑焼」。鉄分が多い陶土を使用することで、特有の朱色に焼き上がるのだそう。大きな壺や瓶、植木鉢なども生産されていますが、代表する製品と言えば急須。
人水 JINSUI  常滑焼 急須
お茶を飲むために使う急須はお湯を注ぐため、無意識に深さや軽さを求め、形やデザインは、どの産地、どのブランドでも大きな差がない。そんな印象をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
こうした代わり映えしない急須のデザインに一石を投じたのが、今回取材させていただいた株式会社人水(JINSUI)です。JINSUI「TOKI」シリーズの急須は、長い歴史で培われた使いやすさに加えて、現代の住空間や生活雑貨のトレンドに合うスタイリッシュさ、茶葉の広がり方、つまり、美味しいお茶の抽出まで考慮された、革新的なデザインが魅力です。
人水 JINSUI  常滑焼 急須


時と急須。時計とデザイン
「TOKI」シリーズは、株式会社人水(JINSUI)の渡邉さんが感性で作った急須で、時計の針をモチーフにした平たい形が特長です。カラーも、KINARI(木成り)・SHIROHAI(グレー)・SUMIKURO(墨黒)が展開されています。
人水 JINSUI  常滑焼 急須
「健康志向というのもあり、緑茶はクローズアップされていますよね。緑茶と急須はセット、日本の文化として急須を世界に提案したい。そして、伝統を現代に伝える手段として、今までの“THE急須”と差別化できる急須を作りたいと思い、取っ手と注ぎ口を秒針と分針に見立ててデザインした、“TOKI”を考えました。職人の世界では、茶を愉しむ時間のことを“時わすれ”と言い、時を忘れ、茶を飲み、そして、時を思い出す。そんな“時”を愉しんでほしいという想いを込めています」と、渡邉さん。
人水 JINSUI  常滑焼 急須
さらに、「平たいデザインにすることで茶葉が広がりやすく、陶製の茶こしの見た目は高級感もある。最近のインテリアに合わせてグレーも販売しています。釉薬を使っていないグレーはJINSUIだけだと思う」と、オリジナルシリーズ誕生の経緯とこだわりを教えてくれました。


クオリティに自信あり。象徴的な陶器の茶こし
「海外の人からは、“日本の物は長く使えるよね”と言ってもらえることがあり、この認識を薄めてはいけないと思っている」と、品質にも徹底的にこだわっている渡邉さん。
JINSUIの急須には、本体と一体化した陶器の茶こしがついているのですが、これを作る作業は実に複雑。渡邉さんも「他社で陶製の茶こし付きの急須は量産できません。品質の基準を満たさないものはすべて破棄している」と話し、作り手の技術への自信と品質を維持するためのこだわりが、ひしひしと伝わってきました。
人水 JINSUI  常滑焼 急須
JINSUIには「TOKI」の他にも、“THE急須”のサイズ感やデザイン、機能を活かしながらアレンジしたオリジナルシリーズ「IROIRO」があります。
人水 JINSUI  常滑焼 急須
このようなさまざまなデザインの急須を、何と1ヵ月で6,000個も作ることができるのだそう。
人水 JINSUI  常滑焼 急須
急須は、茶こし、取っ手、注ぎ口、蓋、つまみ、胴体と言われるパーツがあり、それぞれを成形した後に接合していきます。
人水 JINSUI  常滑焼 急須
さらに、常滑焼には、胴体と蓋をしっかり密着させるための蓋擦りという特徴的な工程があります。この複雑な工程は機械ではなく、すべて手作業で行われていることに驚くと同時に、しっかりとした生産体制が組まれていることに凄みを感じました。


創業は江戸時代。変化しながら成長して200年
常滑焼の伝統を守りながら、新たなことにチャレンジする渡邉さんは、実にユニークなキャリアの持ち主です。
「中学3年生の頃から服が好きでリメイクするようになり、ファッションの学校へ。その後、花に興味を持って1年間学校に行って、花の装飾を専門にする花屋を始めました。2006年頃ですが、飛び込み営業をしていましたね。服や髪型と同じように、“バランスを見ながらコーディネートします”というスタイルで、結婚式場から仕事をもらったり。ただ、当時は個人事業主では信頼してもらえない時代で難しかった」と、渡邉さん自身が歩んできた道を振り返ってくれました。
人水 JINSUI  常滑焼 急須
さまざまなバイトをしながら生計を立てて過ごす中、父親が守ってきた釜屋「人水陶苑」を受け継ぐことになったのは、渡邉さんの転機と言えるのではないでしょうか。
「はっきりしたことは調べられていないのですが、江戸時代の1800年頃に釜屋として創業。ずっと焼き物というカテゴリーでしたが、祖父の代から人水陶苑(じんすいそうえん)として急須作りを始めたんです。そして2014年、代替わりのタイミングで法人化し、株式会社人水(じんすい)になりました」と教えてくれました。
人水 JINSUI  常滑焼 急須
200年以上の歴史の中で、生業を陶器を焼くことから急須を作ることへ。そして今、さらなる進化としてオリジナルの急須を作りながら、現代に合わせたデザインと売り方へ大きく舵を切ろうとしています。


古い考えが衰退の理由。何を言われようと突き進む
現在、渡邉さんはデザイナー、営業責任者、経営者の三刀流でフル稼働。急須をより魅力的な物にしたい、もっとたくさんの人に届けたいという強い想いを胸に、改革者としていばらの道を歩まれています。
「今まで、常滑焼きは地場の問屋さんにしか出せなかったんです。変なところに並べられたり、値段も安くつけられたりして、製造する側は儲からなかった。そこで、2年前ぐらいから問屋に卸すのをやめて、自分で販売ルートを作り始めました」と渡邉さん。今まで培ってきたものを壊してでも、変えなければならない! という強い信念を持って動き始めました。
人水 JINSUI  常滑焼 急須
日本では卸売業が発達し、社会や生活を支えてきました。しかし、交通網が整備されインターネットが普及する中で買い物のスタイルは大きく変化し、大量生産・低価格の物が溢れ、手作りの価値がないがしろにされてきたと言っても過言ではありません。
「陶磁器のコーディネーターさんが“JINSUIを紹介してください”と言ったら、問屋さんから“紹介できない”と言われ、直接連絡が来たことがあるんです。どうやら、常滑焼の歴史が始まって以来のワルって言われているそうです。でも、儲からないことはやらない。悪名無名に勝るっていうテーマでやってます(笑)。問屋さんの中でも価格が合ったら全力でやりますし、納期も絶対に守りますよ」と、苦労しながらも前に突き進む渡邉さんの姿に感動しました。 人水 JINSUI  常滑焼 急須


急須でお茶を飲む。日本の文化を世界へ!
「TOKIシリーズには急須作りの技術を活かしたランプシェードがあります。誰にも真似できないものを作ってみようという思いからで、ラインがすごく綺麗なんです」と渡邉さん。これは、食器というカテゴリ以外から急須にたどり着いてもらうための策であり、日本国内だけでなく、お茶を飲む文化のない世界の人に知ってもらうためのアイディアです。
人水 JINSUI  常滑焼 急須
他にも、贈り物や生活雑貨の見本市、ギフトショーにも出展するなど挑戦を続けられています。こうした販路の拡大は、売上や経営に直結するだけでなく、ブランドや産業の成長には不可欠と言えるのではないでしょうか。
「僕は、仕事は待つんじゃなくて“迎えに行く”と表現しています。作るのに追われて外に出れないという話は聞きますが、デザインも営業も社長業も、新しいことを始めるための時間を作り行動しています。誰かに評価してもらえた時は嬉しいですが、それを求めて動くって変だなと思っていて、自分を肯定する、自分を評価できるのは自分しかいないと」と、仕事の流儀も教えてくれました。
人水 JINSUI  常滑焼 急須
また、「仕事を見て、すごく楽しそうで良い生活しているって思ってもらいたい」と話し、技術を育てることはもちろん、働きたいと思ってもらえる職場環境作りにも全力で取り組んでいることを感じることができました。そして、渡邉さんは「6,000個くださいと言われて、“はい、できますよ!もっとできますよ!”と返事をしたい」「商品を見てもらって、どこに出しても恥ずかしくないものを作る」「急須と言ったらJINSUIというポジションを掴みたい」と目標を語ってくれました。
人水 JINSUI  常滑焼 急須


高品質な急須作りへのこだわり、日本の文化として急須を世界に届けたいという強い想いが感じられる取材でした。
印象としては、デザイナー、アーティストのような側面をお持ちの渡邉さん。目指すところに進むパワー・推進力、そしてブレない軸、話しているとぐいぐい引き込まれるような魅力をお持ちの職人さん。
だからでしょうか、JINSUIの商品からは、渡邉さんのこだわりとものづくりの魅力が漂うような、引き込まれる印象を受けます。
これからますます沢山の、ものづくりの魅力を漂わせた素敵な商品を生み出されるのだと感じています。今後もとても楽しみな職人さん、ブランドです。
急須でお茶を飲むのは日本の文化。ぜひ、日本の茶葉とJINSUIの急須でお茶を飲んでみてください。
渡邉さん、JINSUIの皆さま、取材のご協力誠に有難うございました。









JINSUIの商品一覧




JINSUI TOKI 急須 常滑 茶こし不要

常滑焼の急須 | TOKI


JINSUI TOKI 常滑焼の植木鉢 | TOKI PLANT

常滑焼の植木鉢 | TOKI PLANT


JINSUI IROIRO 急須 常滑 茶こし不要

常滑焼の急須 | IROIRO 01


JINSUI IROIRO 急須 常滑 茶こし不要

常滑焼の急須 | IROIRO 02、03


JINSUI IROIRO 常滑焼の保存容器 急須 常滑 茶こし不要

常滑焼の保存容器 | IROIRO





吉田ヤスリ / YOSHIDA YASURI


吉田ヤスリ ブランド紹介

吉田ヤスリ製作所は、新潟県燕市にある、創業から100年以上金属加工技術を受け継いでいる製作所です。職人が手作業で一つ一つやすり目を打ち込んでいるシンプルかつ高品質な爪やすりを製造しています。




吉田ヤスリの商品一覧




吉田ヤスリ / ステンレス製爪やすり

ステンレス製 爪やすり




吉田ヤスリ / ステンレス製爪やすり

ステンレス爪やすり こども用




吉田ヤスリ / ステンレス製爪やすり

ステンレス爪やすり ペット用






深海産業(Broom Craft)


Broom Craft

Broom Craft

歴史ある箒の作り方をもとに、スタッフによって新たに生み出された独自の製法を加え、職人がひとつひとつ手作りで製作しております。
棕櫚・シダ箒の持つ深い歴史を、人の手で大切に繋いでいきたい。
未来に、そして世界へ。
そんな想いを胸に、日々丁寧に心を込めて、物づくりと向き合っています。





深海産業(Broom Craft)取材記



青く晴れ渡る空に、緑豊かな山々、広がる田んぼ。
今回の取材記では、日本の原風景のような景色が広がる和歌山県海南市にやってきました。
深海産業
和歌山を代表する特産品といえば、みなさん何を思い浮かべますか?
パッと思いつくところでいえば、梅のトップブランド「南高梅」や、甘くてジューシーな「みかん」でしょうか。
ですが、和歌山にはまだまだ隠れた特産品があります。それが、今回お邪魔した「深海(ふかみ)産業」さんの手がける棕櫚(しゅろ)製品です。

棕櫚という言葉、初めて聞いたという方もいらっしゃると思います。
棕櫚とは、いわゆる「ヤシの木」に似た木の一種。私たちが暮らしの中で目にするものでいえば、箒(ほうき)の穂先やタワシなどに使われる素材です。

深海産業では、そんな棕櫚の歴史を未来に繋いでいこうと、オリジナルブランド「Broom Craft(ブルームクラフト)」を立ち上げ、さまざまな商品を制作しています。
深海産業
こちらは看板商品の国産棕櫚箒。サイドにほどこされた三つ編みがトレードマークです。耐久性が高く、丁寧にお手入れすれば20年30年と長く使用することができます。
深海産業
深海産業
その他、フライパンにこびりついた油汚れを落とすのに便利なキッチンブラシや、気になるところが手軽に掃除できる手帚など、ラインナップも豊富。

今回の取材記では、聞き慣れない棕櫚という素材についてはもちろん、深海産業が作る箒の制作秘話から製造現場の様子まで、たっぷりお届けします。
この取材記を通して、みなさんが棕櫚という素材を知り、箒をもっと身近に感じていただければ嬉しいです。


棕櫚って、なに?
「Broom Craft」が手がける棕櫚の箒は、しなやかで柔らかい掃き心地が特長。
また、繊維に適度に油分が含まれているので、埃を舞い上げずに掃くことができ、畳やフローリングに艶が出てくるワックス効果もあるとか!

知れば知るほど箒の素材として優秀な棕櫚ですが、そもそもどういった植物なのか、詳しく教えていただきましょう。お話をお伺いしたのは、スタッフの津村 昴さんです。
深海産業
はじめに、加工する前の棕櫚を見せていただきました。棕櫚は、木の幹を覆っている皮の部分を製品に使用します。
深海産業
まるで人が織ったかのように、格子状になっていますね。これがまったく人の手が加わっていない“自然の状態”というから驚きです!

「もともとこのあたりの山には、棕櫚の木がたくさん自生しています。一説には、高野山の弘法大師・空海さんが『これは産業になる』と言って広めたとも伝えられているんですよ」と津村さん。


時代とともに移り変わる、棕櫚の今
ここまで話を聞くと、地元に生えている棕櫚を使って箒を製造しているのかと思いますが、現在、素材の棕櫚自体は中国から輸入しているそうです。
なぜ国内に生えているのに、わざわざ輸入するんでしょうか?
深海産業
「昔はこのあたりに生えている棕櫚を原料にして箒やタワシを作る地場産業が盛んだったのですが、時代とともにだんだんと下火になっていきました。今ではそのほとんどが、スポンジや歯ブラシといった家庭用品を取り扱う会社に変わっています。今の日本では、棕櫚の木が生えていても、その皮を剥ぐ人がほとんどいない状況です」
深海産業
そもそも棕櫚の木というのは、皮を剥がされると、より強くなろうとしてどんどん硬い皮を生み出す性質があるそうです。人間の皮膚も、外部から刺激を受けると皮が厚くなったり、硬くなったりしますが、まさにそれと同じ。

逆にいうと、皮を剥がないと皮はやわらかいまま。せっかく棕櫚の木があっても、皮を剥いで手入れする人がいない今の日本では、やわらかい皮しかとれません。

「そのやわらかさを生かして、今でも一部のタワシ作りには使われているようですが、ふにゃふにゃし過ぎて箒作りには向いてないんです。なので、うちは棕櫚の素材に関しては中国に頼っています。中国の方が圧倒的に質が良いんですよ」と津村さん。


未来を見据えて始めた、箒作り
もともと深海産業は、1950年頃に先代の深海 洋治さんが自宅で棕櫚縄の生産を開始したのがはじまり。それ以来、70年以上にわたって棕櫚縄を製造し続けてきました。

棕櫚縄は、主に緑化資材として活用されています。
例えば、街路樹が倒れないように添え木をあてて結ぶのに使ったり、竹垣の竹を組むのに使ったり。最終的には自然に還るエコな素材として重宝されており、深海産業が日本国内で95%のシェアをもつそう。
深海産業
「ですが、なかなか時代の流れもあって、棕櫚縄だけではいけない、と。なにかしようというところで始めたのが箒作りなんです」

それが2019年のこと。会社としては歴史ある深海産業ですが、箒作りに関していえば、まだまだ歩き始めたばかりなのです。


きっかけは、京都からの依頼
では、箒を作ろうと思った最初のきっかけはなんだったのでしょうか。当時の事情を、専務取締役の深海 耕司さんに聞きました。

「僕が各地の職人さんを訪ねて回っていたときに、京都の荒物を取り扱う商店の女将さんから依頼を受けたんですよ。京都のシダ帚を作る職人さんがいなくなってしまい、このままでは伝統が途絶えてしまう。なんとかしてシダ帚を復活させてくれないかって」
深海産業
シダとは、パルミラという木の葉柄部分(葉を支える枝の部分)から取り出す繊維のこと。京都ではこのシダを使った箒が昔から使われ、「京帚」や「庭帚」などと呼ばれていました。
棕櫚とシダは似た素材なので、棕櫚縄を扱う深海産業ならなんとかできるのではないかと女将さんは考えたのでしょう。

「いただいた箒を解体して、職人みんなで研究し、なんとか納品はできたんですが。やはり箒に関しては素人なんで、クレームが発生してしまいました」


クレームから生まれた、独自の製法
クレームの内容は、「帚の毛が抜ける」というもの。いきなり大きな難題にぶつかった深海産業ですが、ここから本領を発揮していきます。

「僕らはいい意味で全員が素人のところからスタートしたんで、変な固定概念がないんですよ。今まではこうして作っていた、こうしなければいけないっていうのが、何もなかったので。純粋に『どうすればよくなるか』だけを突き詰めて考えました」と深海さん。

「なぜそういうことが起こるのか」「どうしたらいいのか」。職人が一丸となって問題と向き合い、解決策を徹底的に考えました。そうして生み出されたのが、毛を抜けにくくする独自の製法です。
深海産業
もともと箒は、毛をまとめた束(これを玉と呼びます)を合体させてできています。
画像の「従来」と書いてある玉が、伝統的な製法で作ったものです。芯に対して毛を巻きつけるだけですので、使い続けるうちに毛が抜けてしまうことがありました。

画像の「新規」と書いてある玉が、深海産業独自の製法で作ったものです。今までとは倍の長さの毛を用意し、芯に巻きつけてから折り返して銅線で留め、その上にさらに毛を足す。そうすることで、従来よりも毛が抜けにくい仕様となりました。

もちろん、今までより時間も手間もかかりますが、使い心地を一番に追求するからこそ考えつくことができた製法です。


トレードマークとなる、三つ編みの誕生
京都の伝統製法に独自の製法を加え、シダ帚を見事に復活させた深海産業。そのノウハウを生かして棕櫚箒の制作にも取り掛かりますが、こちらでも、また難題にぶつかりました。

それが、箒を使うときに最も力が掛かるサイド部分の「強度」です。一般的な棕櫚の箒はこの部分に銅線を巻くことが多いのですが、使い続けるうちに銅線が切れたり、ゆるんだりしてしまいます。

銅線を巻かずに、強度を保つ方法はないか。それを突き詰めた結果生まれたのが、商品名にもなっている三つ編み(TRECCIA)。棕櫚をぎゅっと編み込むことで強度をキープしつつ、見た目にもオシャレな佇まいに仕上がりました。
深海産業
「うちは女性の職人が4人おりまして、女性からの意見も取り入れています。…でも正直言って、最初僕は大反対したんですよ」と笑う深海さん。

「そもそも僕は三つ編み自体やったことがないので、それを棕櫚でするっていう発想がなくて。三つ編みだと、可愛すぎるんじゃないかと思ったんです。今は、うちしかやっていない製法ですし、特に女性の方に可愛いとご好評いただけて良かったな~と(笑)」


伝統を守りつつ、進化していく
「うち独自の製法で箒を作っているので、本当に“伝統工芸”かっていわれると、どうなんだろうと思う部分もありますけど…」

伝統をそのまま受け継いでいくことももちろん大切ですが、深海産業は問題を問題のままにせず、時代に即して、より快適な使い心地に進化させていくスタンスをとっています。
深海産業
「見た目は伝統に則った形で、使い勝手としては従来の物よりいいものを、ということで常にアップデートできるようにしています」と深海さん。

進化を続ける一方、伝統を守りたいという想いから、深海産業では“職人育成プロジェクト”に取り組んでいます。これは、年齢・性別・経験の有無を問わず、箒作りのノウハウを伝えていく仕組み。

「職人さんが技術を止めてしまって、弟子にしか教えないというのでは、伝統が止まってしまう。誰でも作れるような工程でカリキュラムを組み、『ここ、こうしたらやりやすかったよ』とか、社内で情報共有しながら箒作りができるようにしています」と津村さん。
深海産業
箒作りに限らず伝統的な物作り全般に言えることですが、おじいちゃんが一人でやっていて、誰も後を継がないということがよくあります。現に京都のシダ帚も、そうやって一度途絶えてしまいました。こういったことがまた起こるのを防ぐ、画期的な取り組みですね。


生き生きとした、楽しい制作現場
ここからは、箒の制作現場にお邪魔します。
箒という商品から、いわゆる職人気質的な空気感をイメージしていましたが、いい意味で裏切られました。性別も年齢も社歴も関係なく、和気あいあいとした楽しい雰囲気があふれています。
深海産業
「みなさん家庭もあるし、子どももいるんで。例えば今日は風邪を引いたからって急に休んだり早退してもOKです。やっぱりそういう働き方をしたほうがいいですよね」
深海産業
「商品を作るっていうのは反復作業なんで、しんどい部分もある。ゆとりを持ちながらやるっていうのが大事です」と深海さん。その言葉通り、工房内は楽しい会話が飛び交います。そうやってワイワイ話をしつつも、作業する手は少しも止まらないのがすごいところです。
深海産業
「僕らは職人のイメージっていうものを払拭したいんですよ。箒だけじゃなくて、どの業界もそうだと思うんですけど、職人が少なくて若い人がやりたくないっていう背景には、『難しそう』とか、『職場の環境が悪そう』とか、そういうイメージがあるんだと思います」と深海さん。
深海産業
「うちは見ての通り、堅物に取り組んでるっていうわけでもなく、楽しくやっています。もちろん、『楽しく』の中でも、きっちりやるところはやりますよ。お客様にちゃんとした商品を届けたいんでね」
深海産業
こちらは、棕櫚箒の三つ編みをしているところです。髪の毛をおさげに編んでいるような感じですね。「髪の毛を編むときとは、ちょっと力の掛け方が違います。上に向けて力を掛けていく感じ」と職人さん。
深海産業
三つ編みの数や長さなどは、特に決まってないそうです。
「玉を合体させて組んでいくときに、一度編んだものをほどいて調整したりするので、作ってみないと分かりません。なので、箒の一本一本が、本当に世界にひとつだけなんですよ」
深海産業
こちらでは、箒の玉を作っています。ある程度大きさを揃えて個体差が出ないようにするため、同じ職人さんが手掛けるそうです。
深海産業
こちらが、玉の芯となる部分。深海産業で取り扱っている緑化資材の余りを巻いて作っています。これ自体も天然素材なので、深海産業の箒はどれも環境にやさしいものばかりです。
深海産業
職人さんが使ってる道具も、各自で使いやすいようにカスタマイズされています。
こちらは銅線を締めるのに使う道具ですが、本来は電気工事用に使うものなんだそう。手前が新品の状態で、奥がカスタマイズした状態です。奥は、黒い持ち手の部分を削って握りやすくしているのが分かりますね。
深海産業
これも、元々はプラスドライバーでしたが、先を落として削り、自作したものだそうです。専用の道具を揃えるわけではなく、例えば100均で見つけてきて改造するなどして、自分たちで使いやすいものを作っています。これも、既成概念にとらわれない深海産業ならではですね。
深海産業
「こういった作業用の道具とかにしても、製品にしてもそうなんですけど。もっといい方法があるんであれば、ちょっとずつでも、いいものにしていきたいです」と深海さん。常に前進し続ける姿勢に、感銘を受けました。


深海産業
ちなみに、今回の工房見学中に、キッチンブラシの制作体験をさせていただきました。先ほどご紹介した道具を使って銅線を締めて、中に折り込む作業に挑戦します。ひと通り説明をしてもらったのですが、やはり見るとやるとでは大違い!
深海産業
足を踏ん張って体重をかけながら銅線を締めるのですが、想像以上に力が必要です。途中で銅線が切れてしまうハプニングもありつつ(笑)、なんとか完成させることができました。ありがとうございました。


棕櫚製品を、未来に繋いで
最後に、今後の展望をお伺いしました。
「あんまり世界中でバンバン売りたいっていうよりかは、地元に昔からあったものを、まず地元に知ってもらって。それが徐々に日本全国で『いいものやね』って広まっていけば、いちばんいいかなと思っています」と深海さん。

「江戸時代から棕櫚の産業はあったんですけど、今、地元の子どもたちに棕櫚ってなにか聞いてもひとりも知らないんですよね。その現状をなんとかしたいです」と津村さんも語ってくれました。

最終的には、和歌山県といえば、梅、みかんだけじゃなくて、棕櫚製品もあるということを知ってもらいたいそうです。
深海産業
「僕らはビルみたいな建物を建てることも、大きな橋を架けることもできないですけど。未来に棕櫚製品を残せたら、自分の人生ハッピーやったなと思います。それをみんなでやっていきたいです。伝えていく自信はあるんで」

そう力強く語る深海さんをはじめ、スタッフの全員の背中には、「CRAFT WITH PRIDE(クラフト ウィズ プライド)」の文字が。
誇りをもって取り組む深海産業のみなさんなら、きっとその未来を実現できるはずです。
深海産業


深海産業さんのものづくりでは国内の素材に固執することなく、作り方についても柔軟で、取り組み姿勢や環境も他とは少し違った印象をうけます。
考えられていることは「より質の良いものをより作りやすく」、そして何より「箒作りが次代にも続けられる産業になること」。
伝統に縛られて変われないものづくりはいずれ消えてしまう。これは多くの作り手さんの取材にうかがって感じていることです。「唯一、生き残るのは変化できる者である」ということですね。
積み重ねてきたものを変えるのは勇気がいりますが、その点深海産業さんはフラットな気持ちで取り組めたのが良いものを生み出せたのだと思います。
伝統を守るのではなく、大切にし、その芯の部分を理解すれば、それ以外の部分を変えることは日本ものづくりにとって今求められていることだと感じました。
深海産業

深海さん、津村さん、深海産業のみなさま、長時間にわたる取材にご協力いただき、ありがとうございました!









Broom Craftの商品一覧




国産棕櫚箒 | TRECCIA  -Broom Craft-

国産棕櫚箒 | トレシア





国産シダ箒  -Broom Craft-

国産シダ箒





国産棕櫚の万能ブラシ | トレシア  -Broom Craft-

国産棕櫚の万能ブラシ | トレシア





国産棕櫚の万能ブラシ  -Broom Craft-

国産棕櫚の万能ブラシ





国産棕櫚・シダの手箒  -Broom Craft-

国産棕櫚・シダの手箒





国産棕櫚の万能ブラシ  -Broom Craft-

国産棕櫚の鍋敷き







サイフク(mino・226)


minoサイフク226  ブランド紹介

雪国の冬に使われてきた「蓑」をモチーフにして生まれたブランド。
新潟の美しい四季を背景に、シンプルなデザインのニットアイテムを提案。
時代や流行に左右されず、長く愛用できる物づくりを心がけています。


minoサイフク226  ブランド紹介

「226」(つつむ)は、ヒトと暮らしをニットでつつんで、心地よくユーモアあふれる毎日へ導くことをコンセプトとしたブランドです。頭・手足・お腹など大事なカラダの一部から、インテリアなど生活を彩るプロダクトまで、すべて物を、楽しい工夫でつつみます。




サイフク(mino・226)取材記



ニットといえば、秋冬に着るセーターやカーディガンを思い浮かべる人が多いと思います。でも実はニットって、“防寒着”としての良さだけではなく、さまざまな魅力を持った素材なんです。

今回は、そんなニットの可能性を積極的に発信し続ける、ニット専門メーカー「サイフク」さんにお邪魔しました。訪れたのは、新潟県の五泉(ごせん)市です。
サイフク
五泉市は、『ニットの産地』としてアパレル業界で広く知られた存在です。サイフクは、この地で1963年から物づくりを続けてきました。
サイフク
お話をお伺いしたのは、常務取締役でブランドマネージャーの斉藤佳奈子さん(左)と、スタッフの 山木紗百合さん(右)です。

サイフクでは、2つのオリジナルブランドを手掛けています。
nico ストールポンチョ
mino nico ストールポンチョ
新潟の四季を生かして、シンプルなデザインで展開する「mino(みの)」。

サイフク
サイフク
体の一部からインテリアまで、いろいろなものをニットで包むことをコンセプトにした「226(つつむ)」。

それぞれのブランドの魅力から、知られざるニット作りの裏側まで、いろいろなお話をお伺いしてきました。この取材記を通して、みなさんのニットに対する意識が少しでも変化してくれれば嬉しいです。


時代とともに移り変わる、ニット業界
五泉市は、古くから豊富な水資源に恵まれ、繊維の町として発展してきました。着物から洋服へと時代の流れが変化するなか、五泉市も織物からニット製造へ転換していきます。

クオリティの高い商品や品質の安定性が評価され、今では、有名ブランドやデザイナーからも支持される『ニットの産地』として注目されるように。
サイフク
そんな五泉市ですが、メーカー数は時代の情勢とともに、減ってきているそう。

「物作りが、日本から中国などの海外に移行したときがあって。そのタイミングでだいぶ減りましたね。価格と量の問題もあるので…」と斉藤さん。


自社ブランド誕生のきっかけ
自社ブランドを手掛ける前のサイフクは、アパレル業者から受注して商品を製造する、いわゆるOEM生産を行っていました。しかし時代の変遷とともに、それだけだと、ニットメーカーとして一年間やっていくのが難しくなったそうです。
サイフク
一年の中でもだんだん“谷間”が多くなってきたころ、斉藤さんたちは立ち上がります。

「OEMの営業活動を頑張っても、なかなか谷間を埋められない状況でした。やっぱり『自分たちで作って、自分たちで売る』っていうことを早めに始めて、種まきした方がいいんじゃないかという話になり、自社ブランドの制作に向けて動き出したんです」


シンプルな作りの「mino」に込めた想い
最初に立ち上げたブランドが、2012年に誕生した「mino」。これはどのような経緯で作られたのでしょうか。

「アパレル業者さんと常にやり取りをしていると、すぐにセールがやってくるんですよ。『私たちは、すごく賞味期限が短いものを作っているんだな。生鮮食品みたい…』と思うことがあって。自社ブランドでは、あんまりそういうことをしたくないなぁと思ったんです」
nico ストールポンチョ
「それに、今でもOEMでたくさんのアパレル業者さんと取り引きをしているので、そこを邪魔するようなものは、作りたくなかったんですよね」と斉藤さん。

確かに「mino」は、あまり見かけないシンプルな作りで、サイズ展開もなく、流行に左右されにくい。これは、そういった考えをもとに生まれたものなんですね。


外部と協力して、より良いものに
「mino」を立ち上げる際、一緒にブランディングに携わったのが中川政七商店さんです。こういった外部の方と一緒に動くことで、サイフクとしてはどのような影響を受けたのでしょうか。

「minoって、うちの商品の中で、もっとも簡単、もっとも単純な作りなんですね。ここまで単純なもので勝負するって、自分たちだけでやったら、なかなか踏み切れないと思います」と斉藤さん。
nico ストールポンチョ
シンプル過ぎて「これで本当にいいのかな?」と不安になってしまうところを、「これでいこう!」と力強く背中を押してくれる。こういう部分は、客観的に見てくれる外部の協力があってこそ。

また、「mino」には、丸めて持ち運べるように紐が付属しているのですが、これも中川さんと話すなかで生まれたもの。お客様だけでなく、店頭で売るときにも便利なんだそう。

「中川さんは売り場を持っていらっしゃるので、店頭で実際に売っている側からの話を聞きながら作れたのは、とても良かったですね」


外部のチカラも、自分たちの糧にして
ずっとOEMを中心としてやってきたサイフクでは、「企画をする」「作った後に売る」ということが初めてで、まさにチャレンジでした。その分、いろいろ苦労もあったのでは?

「なにかをやると、常に壁にぶつかるんでね(笑)。その時に『どうしよう!?』ってなっても、なんとか乗り越える。またなにかをすると、壁にぶつかる。もう、その繰り返しですよ(笑)。その繰り返しが、大変ではあったけど、今のノウハウや体力みたいなものにつながっていると思います」と笑顔で話してくれた斉藤さん。
サイフク
「良いものを作っているから売れるはずって、作り手は思いがちですけどね。やっぱりそれを“伝える力”がないと。良いものを作って、ただ東京に並べてきました、みたいな感じだとお客様には分かってもらえないと思います」
そういう点でも、しっかりとした流通を全国に持っている中川さんと組みたいと思ったそうです。

「ブランドのスタートとしてはよかったんですけど、ただそれだけではダメなんです。もっとほかに卸す流通先をみつけるために、展示会に出るとか、ECサイトを立ち上げるとか。ひとつひとつやっていった感じです」と、力強く語ってくれた斉藤さんと山木さん。 サイフク
私も、自社ブランドを立ち上げて頑張っているメーカーさんのところによく取材にいくのですが、「自分たちでちゃんと考えて発信していこう!」と動ける人が社内にいるかいないかで、そのブランドがうまくいくかどうか、変わってくると思います。「外部の人と一緒にやるから、全部おまかせすればいいんだ」というスタンスだと、たぶん難しい。ブランドを作るって、そんな簡単なことじゃないんです。自分たちでやるっていう、意識があることが大事なんです。

「外部の方も、永遠に並走してくれるわけじゃないですし。ひとり立ちしてやっていくには、自分たちがチカラをつけていくしかないですね」


ニットのおもしろさを発信する「226」
では、2つ目のブランド「226」が誕生したのは、どのような経緯があるのでしょうか。

「minoを立ち上げてしばらくやっているうちに、minoだけでは、ニットのおもしろさが伝えきれないなぁと感じるようになったんです」と斉藤さん。

「mino」には、シンプルな作りの良さがある。でもそれとは逆に、いろいろな編み方ができたり、伸び縮みしたり。そういう部分もまた、ニットの魅力のひとつ。ただ、その部分を「mino」に入れてしまうと、ブランドの世界観が崩れてしまいます。
サイフク
「もっとニットの可能性みたいなものを表現できるブランドがほしい、と思って作ったのが226です。どちらかというと総合ブランド的な感じで、衣料だけじゃなくて、バッグとかインテリアとか、なんでもやっています」
サイフク
「226」はロゴのデザインもユニーク。「226」の下にある「3129」はサイフクの社名、「5000」は五泉市の五泉。よく見ると「210」のニットも隠れています。

「もっと自分たちを前に出したブランドにしたいっていう、想いも込めています」


ブランドを起点に、広がる輪
「226」を立ち上げてから、意外とOEM生産の方にもいい影響があったそうです。

「例えば、今までOEMではバッグみたいなものって作ってなかったんですけど、226にバッグがあることによって、ここから派生して、コラボのお誘いがきたり。イスメーカーさんとか、普段なかなか出合わないようなメーカーさんとつながれたり」
サイフク
「226」でいろんなことをやっているからこそ、さまざまな企業からお声が掛かるようになったとか。発想次第でいろいろ作れる、ブランドならではの魅力がよい結果に広がっていますね。


社内の人間だから、できること
ブランドマネージャーでもある斉藤さんは、商品のデザインも行っています。しかし、もともとデザインの経験がなかったというから驚きです。

「最初は外部のデザイナーさんにアイディアをもらったほうがいいのかなと思ったりしたんですけど…。結局はニットのことをよく分かっていて、うちの機械背景の特長をうまく生かすことが大事だったりするので。自分でうんうん悩んだほうが、スジのいいものが出る気がして」
サイフク
特にそれがよく分かる商品が、226の「見せるハラマキ」シリーズ。お腹の部分が薄くてすごく伸びる生地なのに対し、裾部分は見えても下着っぽくないよう、しっかりと厚い生地に。

「こういうデザインも、それぞれの生地を縫製してくっつけるんじゃなくて、このまま編める機械がうちにはあるんですよ。そもそもこの機械は、薄手のセーターのケーブル模様だけ厚く表現したいっていうときなんかに使ったりするんですけど。この機械のおもしろさって、なにかに使えないかなとずっと思っていたんです」

機械の特長をきちんとつかみながら、一般消費者の「腹巻は使いたいけど、腹巻として見えるのはイヤ」という心理具合も見事に汲み取った商品。これは、外部のデザイナーさんではなかなか出せないものですね。


知っているようで知らない、ニットの製造現場
さて、ここからは、実際にニットが生み出される現場にお邪魔してみましょう。
サイフク
最初は、糸を編んで編地を作る工程です。こちらはパソコンで、編地を編むためのデータを作っているところ。柄を組むのはもちろん、糸を何本で編むのか、ふわっと編むのか、ぎゅっと編むのかなど、いろいろなことを何度もチェックしながら作っていきます。
サイフク
サイフク
先ほど組んだデータをもとに、こちらの大きな編み機で編んでいきます。サイフクには、なんと80台もの編み機があるそう!
「編み機は同じように見えても、それぞれ針の太さが違うんです。針の部分をごそっと取りかえればほかの太さが編める…というわけではなく、ひとつひとつがその太さ専用の機械なんです」
それで、こんなにたくさんの編み機が必要なんですね。
サイフク
こちらは最新のホールガーメント機。縫い目のない、無縫製の商品が編めるそう。
サイフク
ここは洗いの工程を行います。大きな洗濯機と乾燥機のような機械で、水洗いやお湯洗いなどをして、風合いよく仕上げていきます。
サイフク
編み機で編んだ編地を、パターンに合わせて裁断していきます。前見頃、後ろ見頃、袖、ポケット、フードなど、それぞれのパーツごとにどんどん分けていきます。
サイフク
こちらは縫製の工程です。ミシンやロックミシンを使って、スピーディに、立体的に縫っていきます。
サイフク
普通の生地と違って、ニットを縫うのは難しそうですね。
「ニットは伸びたり縮んだりするので、縫うときはちょっと縮めながら縫って、伸びすぎないようにしています」と職人さん。
サイフク
こちらは「リンキング」と呼ばれる縫い合わせの工程です。編地のひと目ひと目を、もう一度針に刺していく、非常に細かい作業! 職人さんの手元を見ていると、思わず息をするのも忘れてしまいそう。
サイフク
リンキングではループとループを同じ針に刺して縫い合わせるので、縫い代のない仕上がりに。襟元など、伸び縮みの必要な部分によく使われます。
サイフク
こちらは仕上げの工程。縫っていると端に糸が出たりする場合があるので、それをきれいに取りのぞいたり、キズがあれば直したりしています。
サイフク
蒸気が出る台の上に置き、縫ったあとの縫いジワを整えていく工程です。金枠にセットして、指示通りの寸法を出していきます。
サイフク
最終の検品をして出荷します。襟ネームや下げ札がつき、私たちがお店でよく見る商品に。

今回はざっと駆け足で見学させてもらったのですが、商品だけ見ていると気付かないところや、作られるまでの大変さを知ることができました。リンキングなど初めて見る作業も多く、これからニットを着るときに、思わず襟元を確認してしまいそうです(笑)。


これからも、ニットの魅力を形に
最後に、これから先、めざすところについてお伺いしました。

「いろいろ作っていくなかで、やっぱりもっと気軽に洗えるようにしたいなと思っています。ニットの衣類を洗濯機で洗えるようにするには、糸や作りなど、けっこう考えないといけなくて…」と斉藤さん。

「ブランドでいえば、minoと226のブランドの差が、なくなってきちゃった部分が最近あるので。minoはもともとある、新潟の四季というコンセプトに立ち戻るようにしたいなぁと思っています」
サイフク
常に自分たちで考え、生み出していくサイフクさん。今後の課題もきっと乗り越えて、新しく、楽しいアイテムを、また私たちに届けてくれることでしょう。

長い時間、取材にご協力いただきありがとうございました。









minoの商品一覧




mino 洗えるストールポンチョ nico

洗えるストールポンチョ nico





mino 透けるボーダー ストールポンチョ nico | 涼しい麻

透けるボーダー ストールポンチョ nico | 涼しい麻





226の商品一覧




226 見せるはらまき

見せるウールハラマキ





226 のびるニットロングスカート

のびるニットロングスカート







タダフサ


タダフサ  ブランド紹介

職人の手仕事にこだわる新潟県三条市の庖丁メーカー。「基本の3本、次の1本」をコンセプトにした「庖丁工房タダフサ」をはじめ、プロ料理人用・家庭用・蕎麦切り庖丁など幅広い包丁/刃物を製造販売しています。




タダフサ取材記



毎日の料理に欠かせない、キッチン道具。なかでも包丁は、繊細な日本の食文化を支える道具として重要視され、昔から各地でさまざまな種類が製造されてきました。特に“日本三大刃物産地”のひとつとして有名なのが、新潟県三条市です。
タダフサ
今回は、この地で昔から受け継がれてきた鍛冶の技術を生かして、本格派の包丁を作り続ける「株式会社タダフサ」にお邪魔しました。
タダフサ
お話をお伺いしたのは、代表取締役社長の曽根忠幸さん(左)、番頭の大澤真輝さん(右)です。
タダフサ
タダフサが手掛ける『包丁工房タダフサ』シリーズでは、「まずこれだけ揃えれば充分」という“基本の3本”(パン切り包丁、万能包丁 三徳、万能包丁 ペティ)を提案しています。
タダフサ
「パン切り包丁」は、先端だけに波刃をあしらった独特のデザイン。この波刃でパンに切れ目を入れてから、まっすぐな刃でスライドすれば、パンをつぶさずキレイに切ることができます。
タダフサ
「万能包丁 三徳」は、肉・魚・野菜といった幅広い食材に対応でき、家庭のキッチンで重宝する存在に。
タダフサ
小回りが利く「万能包丁 ペティ」は、果物の皮むきや小さな野菜のカットなど細かい作業に最適。
タダフサ
刃の部分は、よく切れて錆びにくい「SLD鋼」をステンレスで挟んだ三層構造。するどい切れ味が特長です。丸みを帯びた優しい雰囲気のハンドルは、タダフサさんの特許「抗菌炭化木」が使われており、衛生的に使えます。

これら“基本の3本”のほか、料理の腕が上がったら揃えていきたい“次の1本”として牛刀や出刃などを4種類展開しており、『包丁工房タダフサ』のブランド全体では、7種類の包丁が揃います。

今回の取材では、包丁に関することはもちろん、国内・海外におけるブランディングの違いから、モノ作りの産地として未来を見据えた動きまで、幅広い視点でお話をお伺いしてきました。包丁の魅力とともに、タダフサさんの企業としての考え方やモノ作りに対する熱い想いなどを、みなさまにお届けできると幸いです。


決して平坦ではなかった道のり
株式会社タダフサは、1948年に初代(現社長・曽根さんの祖父)が独立創業したのがはじまり。もともとは、漁業用刃物を中心に手掛けており、その後、家庭用包丁や本職用包丁などを製造するようになりました。

「実は『包丁工房タダフサ』を作る前は、ずっと業績が良くなかったんですよ。僕が会社に入ったのが今から22年前なんですけど、バブルが崩壊して、リーマンショックもあって・・・」と語る曽根さん。
タダフサ
特に、タダフサのルーツである漁業用刃物は、創業当時からずっと作り続けて安定した売上があったのですが、2011年の3月、突然大きく落ちこんでしまいます。
原因は・・・戦後最大の自然災害となった、あの、東日本大震災。

「漁業用刃物は、東北の三陸のあたりが一番取り引きが多かったんで、一気にダウンしました。そこからは悪い状態が続きましたね」


転機となった、2011年3月
未曾有の災害が起こった2011年の3月ですが、ちょうど同じ頃、中川政七商店さんによるコンサルティングがタダフサで始まり、新しいブランド『包丁工房タダフサ』を立ち上げることに。

「僕にとっては、震災が大きなきっかけでしたね」と曽根さん。

「やばい、自分でなんとかしないと、本当に会社が潰れる!という状態にまで追い込まれて。そこから本気になってブランディングに取り組んだ感じです。震災がなければ、たぶん『包丁工房タダフサ』はできてなかったし、自分と会社の将来を、そこまで深く考えられなかったんじゃないかと思います」
タダフサ 中川政七商店さんは、生活雑貨の販売のほか、工芸メーカーへのコンサルティング業も行っています。今では多数のブランディングを手掛ける中川さんですが、当時はまだ『包丁工房タダフサ』が2例目というタイミングでした。

「もともと三条市はモノ作りが盛んな町で、その鍛冶の火を絶やさないようにということで、当時の市長さんと一緒に立ち上がって始めた取り組みでした。おかげさまで、国内においては『包丁工房タダフサ』がどーんと(笑)圧倒的に、有名になりましたね」と曽根さん。


初心者も選びやすいラインナップ
包丁と一口に言っても、用途によって種類も素材も多く、素人ではどれを選んでいいか分からないものですが、『包丁工房タダフサ』は“基本の3本、次の1本”という考え方に基づき、7種類に絞って展開しています。包丁に詳しくない人でも、料理の腕前に合わせて選びやすいのがポイントです。この着眼点はどのような流れで生まれたのでしょうか。

「当時のブランディングでいうと、やはり既存の販路“じゃない”ところにも包丁を置いてもらいたいというのがあって。そのためには、分かりやすい仕組みがいるんじゃないかと」

“基本の3本、次の1本”という仕組みがあれば、刃物専門店のような詳しい知識がなくてもお客様に提案しやすい。つまり、今まで包丁を扱ってこなかった雑貨屋やアパレル店などでも販売しやすくなるのです。
タダフサ
「選びやすい、分かりやすいっていうのは、『包丁工房タダフサ』の魅力のひとつですね」

ブランドリリース後は販売店が驚くほど増え、売上も順調に回復。さらに、コロナ禍の「おうち需要」で包丁のニーズが高まり、今では過去最高の売上を更新するほどになりました。こう聞くと、なんともうらやましい話ですが、その裏で、意外な課題も発生したそうです。


ひとつに縛られないように
『包丁工房タダフサ』は7種類の包丁を展開していますが、これは逆に言えば、7種類で完結してしまうということ。

「ある意味、完璧なブランディングをしてしまったがゆえに、このブランドばかりやってると職人が育たないんですよ」と苦笑する曽根さん。
タダフサ
ずっと7種類の包丁だけ作っていると、毎日同じ製造に掛かりっきりになり、いくら職人さんでも飽きてくるのだとか。

「なので、『包丁工房タダフサ』とはちょっと違うものとして、海外のお客様向けの案件も積極的に手掛けています。それによって、常に同じ仕事じゃないっていう状況をなるべく作るようにしているんです」


国内と海外、なにが違う?
「国内と海外で、包丁のニーズは全然違うんですよ」と教えてくれた曽根さん。

国内で売れているのは、ほとんどが『包丁工房タダフサ』です。前述の通り、販路は雑貨屋やライフスタイルショップが中心。ここ10年ぐらい日本で続いている、優しいナチュラルなデザインのブームもブランドの後押しになっています。

「国内では、『錆びにくくて使いやすいですよ、メンテナンスは私たちがやりますよ』という形でやらせてもらっていて。ホームページも白ベースで打ち出しています」
タダフサ
一方、海外で重視されるのはとにかく切れ味。錆びやすいけど、よく切れる鋼の包丁が人気だそう。

「外国のお客さんに『錆びやすいけどいいの?』って聞いたら『包丁の本質は切れ味。切れ味が一番。錆びる、錆びないは二の次だよ』と言われました。彼らは『錆びたら研げばいいじゃん』っていう感覚なんですよ」

実はこれ、販路の違いも関係しています。日本は、刃物の専門店がどんどん無くなっていますが、海外は逆で、刃物の専門店が専門店としてちゃんと残っており、みんなそこで包丁を購入します。メンテナンスまでやってもらえるので、包丁は研ぎながら長く使うという意識が強いそう。

また、切れ味という機能性が重要視されるため、プロダクトとしてカッコいいものを求める人が多いとか。
タダフサ
「海外では、ホームページも思いっきり黒ベースで、『私たちは鍛冶屋です、ブラックスミス(英語で鍛冶屋の意味)です』って雰囲気にしています」

国内と海外では、まったく逆のブランディング。作られている包丁のクオリティはそれぞれ変わらないけれど、プロモーション、伝え方が全然違います。会社として、どちらも大事に、うまくバランスをとりながらやっていらっしゃるのは、すごく面白いなと思いました。


長く使うために大事な、研ぎ直し
包丁というのは、使えば使うほど切れ味が悪くなってしまいます。本来の能力を再び発揮させるには、メンテナンス、つまり“研ぎ直し”が必要です。タダフサでは、この研ぎ直しサービスも有料で行っています。

「売るっていうのももちろん大事なんですけど、うちは一本の包丁を大事に長く使ってほしいっていうのがモットーなんで、研ぎ直しに力を入れています。他社製品でも受け付けていますよ」と曽根さん。
タダフサ
国内の場合はタダフサが研ぎ直し対応できますが、海外の場合は難しい。そこで、海外の専門店と取り引きする際は、研ぎのメンテナンスができるかどうかちゃんと調べ、それが可能な専門店のみに販売しているそう。

「国内でも海外でも、うちの包丁を使ってくれるお客さんたちが、最終的にずっと満足できる状態をいかに作れるかっていうことを考えています」

売って終わり、売れればOKということではなく、そこから先までちゃんと寄り添ってくれるタダフサの姿勢は、消費者にとっても嬉しいですよね。


現場を見て、感じるイベントを
曽根さんが中川さんと一緒にブランディングを始めた際、『モノ作りの背景が透けて出るような仕組みがいる』と言われ、その言葉がすごく印象に残ったそうです。その後、いろんな人と会話をするなかで、曽根さんは「工場の祭典」というイベントの開催を思いつきます。

「当時の燕三条地域では、うちも含めて、それぞれの工場で工場見学をやってたんですよ。来てくれた人に現場を見せて、どういう風にモノが作られているか説明して、納得してもらう。結局はこれが一番手っ取り早くて分かりやすい。それならみんなにもっと産地まで来てもらって、どんどんこれを見せちゃえばいいじゃん、と」
タダフサ
現場を公開して、体験して、感じてもらう。作り手と使い手の距離を縮める、オープンファクトリーの取り組みです。これが大きな話題を呼びました。燕三条地域だけではなく、全国の作り手が「地方でもいろんなことができる」ということに気付いて動き始めたのです。

「ある地域でも同じようなイベントを始めたんですけど、それも前年に工場の祭典を見にきて、『パクります!』と堂々と宣言されて(笑)僕も『やれ、やれ!』って(笑)」


モノ作りのおもしろさが広がった、結果
このイベントは、燕三条地域にさらなる変化を生み出しました。工場の祭典をきっかけにして、モノ作りに魅せられた若者たちが「職人になりたい!」と訪れるようになったのです。
タダフサ
「やっぱりこれから地元の中でパイを取り合ってもしょうがないんで、いかに、東京や地方から引っ張ってくるかっていうのをやらないと、働き手が不足してしまう。工場の祭典を通して、あわよくばこっちで働いてもらう、移住してもらうっていう形に持っていきたいと意識してやっていました」

実際に私が各地のモノ作りを取材する中でも、こういうイベントを精力的にやっている産地は、若い働き手が増えているイメージがあります。単純にイベントの動員人数や売上が狙いというわけではなく、未来に向けての影響まで考えていたなんて、すごいですね。


次の世代に引き継いで
タダフサは、曽根さん自身が35歳という、地元の中でも早いタイミングで社長になり、さまざまな改革を実施。若い働き手の獲得にも成功し、会社自体がとても良い循環でまわっています。しかし全国に目を向けると、モノ作りの産地では、職人や後継者などの高齢化が課題になっているところも。

「僕の座右の銘は『温故知新』って、ずっと言ってるんですけどね。やっぱり、昔からある技術の基本の基っていうのは大事です。でも、そこに至るプロセスって、新しい技術があるんなら変えたって全然いい」
タダフサ
「DX化もそうだし、新しい世代に向けてのアプローチとか、若い人にしかできない部分ってあると思うんですよ。どうしても“冒険”ってなったときに、お年寄りの方たちは冒険しにくい。カタカナ語で言われたところで、なに言ってんだ?てなるし・・・」

曽根さん自身も、今後は会社として大きくなるというより、「次の世代に渡すまでの余力みたいなものを作っておきたい」と語ります。
これからどうなるか分からない子どもたちの世代が、より変わりやすく、変わるのを恐れないような余力をつけておく。常に次を見据える曽根さんの視点は、とても勉強になりました。


包丁が生まれる現場へ
ここからは、実際に包丁の製造現場をのぞいてみましょう。包丁の種類によって作業工程が異なるので、代表的な工程をざっくりとご紹介します。
タダフサ
タダフサ
ガス炉で800~900度に熱した鋼材を叩いていく「鍛造」という工程は、とにかく暑い! 夏の工場内は大変な暑さだそうです。
タダフサ
鋼材がみるみる形を変えていくさまは、迫力満点。ずっと見ていられる職人技!
タダフサ
こちらは、金型で包丁の形に打ち抜いていく「型抜き」という作業。
タダフサ
高温で熱した後に生じた、曲がりや歪みを矯正する「歪取り」。わずかな歪みも見逃さず、職人さんが叩きながら微調整していきます。
タダフサ
タダフサ
包丁の肉厚や形状を均一に整えるために行う「研磨」。職人さんが表面を確認しながら、一本一本丁寧に行っていきます。一度だけではなく、製造工程の中で何度も何度も研磨されるので、良い包丁が生まれるのも納得です。
タダフサ
タダフサ
刃と柄の部分を接着し、ここからさらに研磨。持ち手の心地よさ、角のなめらかさ、そして刃と柄の接続部のなめらかさを作るために、複数の職人さんが時間をかけて完璧に仕上げていきます。


目指すのは、モノ作りのダイバーシティ
最後に、曽根さんに今後の展開や夢についてお伺いしました。

「燕三条地域がモノ作りの町っていうのは、ある意味評価された部分があるんですけど。それを世界から見たときにもしっかり評価される立ち位置に、いかに昇華させられるかっていうのが僕の今後のテーマかなと思っています。『困ったときは燕三条』『燕三条に行けば何かができる』と言われたい」
タダフサ
「それにともなって、職人を養成するっていうことも今後手掛けていきます。それは国内だけではなく海外からも人を受け入れる、モノ作りのダイバーシティみたいな感じ。外国人も男も女も関係なく、モノ作りしたい人が集まる町にしていきたいですね」

力強く語ってくれた曽根さん。 取材に伺う前は、やはり包丁の世界なんで、職人気質の社長さんなのかなと勝手にイメージしていたんですが、いい意味で真逆の、柔軟な社長さんでした。変わっていくことに、積極的な社長さんだからこそ、これからも快進撃が続いていくのでしょう。

長時間の取材にご協力いただき、ありがとうございました。









タダフサの商品一覧




タダフサ パン切り包丁

パン切り包丁





タダフサ 万能包丁 三徳 170

万能包丁 三徳 170





タダフサ 万能包丁 ペティ 125

万能包丁 ペティ 125








hana to mi


hana to mi  ブランド紹介

hana to miは「調える香り」 をコンセプトに、心・体・環境をホリスティックな観点からアプローチするアロマブランドとして誕生しました。 現代社会で一生懸命生きるあなたの心と体を、より調和のとれたバランスに導きます。




hana to mi 取材記



みなさん、和精油って聞いたことがありますか?
あまり聞きなれない言葉ですが、日本の素材を使って作られた精油(アロマオイル)のことです。

今回は精油などの商品の製造・販売を行うフレーバーライフ社さんにお邪魔し、和精油を使った商品やその製造過程を見せていただきました。

創業は今から約27年前。
海外で出会った精油の香りに感動した社長が輸入販売を始めました。以来すべて植物由来、100%天然の素材にこだわった商品を作り続けています。

そんなフレーバーライフ社から生まれたブランドが「hana to mi(ハナトミ)」です。

hana to mi

hana to mi のコンセプトは「調える香り」
心・身体・環境のバランスが崩れがちな現代人にホリスティックな観点からアプローチし、調和を生み出すブランドとして誕生しました。

今回の取材記では、和製油を使った「hana to mi」の商品や、商品にかける想いなどをご紹介します。


フレーバーライフ社とは?
フレーバーライフ社では精油やハーブに関連した商品の製造・販売を行っているほか、一般の方向けのスクールも行っています。

hana to mi

スクールというとアロマに関する資格取得のための講座といった感じでしょうか。

「資格取得の為のコースの他に、ハンドセラピストの体験や、ハーブティーの講座など色々やってます。うちの社長はたくさんの人にアロマを知ってほしい、詳しくなってほしいという気持ちがあるんです」教えてくれたのは営業部の飯室さんです。

スクールの運営には社長さんの思いが込められているんですね。そんな社長さん、一体どのような方なのかをお聞きしました。


優しい社長だからこそ生まれたアイディア
「社長はとにかく優しい人です。あとは『こうゆうのがやりたい!』という想いは人一倍強いタイプですね。社員の企画に意見をくれたり、新しいことを思いついたりもします。最近始めたディフューザーの量り売りも社長のアイデアなんです」

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見せていただいたのはこちらのディスプレイ。自ら木材を持ってきてDIYで作ったそうで、これには社員の皆さんも驚いたんだとか。

以前から「ディフューザーの詰め替え用のオイルを販売して欲しい」という要望はあったものの、ガラスの容器に入れておく必要があるオイルは、詰め替え用を作ることができませんでした。

そこで思いついたのがこちらの量り売り。オイルの品質を守りながら、購入者の方や地球環境に配慮した、温かい発想から生まれたアイディアなんですね。


アロマとの出会い
社長さんのご実家が造園業を営んでいたため、もともとドライハーブなども扱っていたそうですが、フレーバーライフ社設立のきっかけとなったのは、イギリス旅行中のアロマとの出会いだったといいます。

「社長は滞在中に初めて嗅いだラベンダーの精油の香りに感動したと言っていました。それまで日本にはなかったものですから、同じ感動を日本でもたくさんの人に味わってもらいたいという想いで輸入し、自身で小分けにして充填し販売したのが始まりなんです」とのこと。

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通信販売を始めた当時はアロマという言葉すら聞いたことのない人も多く、認知されていないものを広める難しさに加えて、扱うのは香りの商品。
まずはラベンダーやオレンジ、ミントなどのイメージしやすいものから始めて、徐々に種類を増やしていったそうですが、嗅いだことのない香りを文章でイメージしてもらうというのは相当大変だったと思います。


和精油を使用して作られた hana to mi シリーズ
創業以来、世界各国で選び抜いた様々な精油を扱っているフレーバーライフ社ですが、日本の素材を使用した和精油にもこだわっています。

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和精油を使用して作られたhana to miは、中川政七商店さんの商品企画の方と協力してコンセプトを考え、古き良き日本の香りをベースに商品作りを行っています。

「和精油自体は以前から製造していました。日本で育った植物から生まれる精油は、どこか懐かしいような印象を与えてくれます。例えばヒノキの香りを嗅ぐとお風呂をイメージしてリラックスできますよね。hana to mi ではそんな和精油を中心にブレンドして作られた日本人に馴染みやすい商品を展開しています」

飯室さんによると、同じ植物でも海外と日本とでは香りが違うんだそう。さらには日本国内のものでも、産地や植物が育った環境によって香りが異なるため、色々な産地の香りを嗅いで厳選して商品化していると教えてくれました。

実際にヒノキのサンプルで嗅ぎ比べをさせていただいたのですが、産地によって重厚感があったりスッキリしていたり、同じ日本の精油でもこんなに違うものなのかと驚いてしまいました。


日本古来の懐かしい香り「6種の薫物」とは?
hana to mi の香りのテーマになっている「6種の薫物(むくさのたきもの)」とはどのようなものなのでしょうか。企画部の小池さんにお話をお聞きしました。

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「6種の薫物というのは平安時代頃から使われてきた代表的な練り香です。懐かしい気持ちにさせてくれる和精油と様々な機能を持った洋精油をブレンドし、心・体・環境に不調を抱える現代人にアロマテラピーで寄り添う商品を作りました」とのこと。

ブレンドに使われる精油は和洋合わせて計33種類。自然の恵みが贅沢に使われているんです。

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女性の魅力を高めたい時のフローラルな香りのbaika、質の良い睡眠をとりたい時のシトラスフルーティーな香りのkikka、すっきりしたい時におすすめのスパイシーな香りのrakuyoなど、気分やシーンに合わせて使い分けられるのが嬉しいですよね。


植物療法という考え方
hana to mi の監修は、フランスでハーブ薬局に勤めていたガロワーズ香織さんという植物療法士の方が行っています。フランスではアロマテラピーやハーブが医療の分野で確立しているため、漢方のように体調に合わせてアロマを処方したりドライハーブを煎じて飲んだりというのが一般的だといいます。

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hana to mi の商品も植物療法の観点で作られているとのことですが、日本ではアロマやハーブはどのような位置付けなのでしょうか。

「アロマやハーブの効果は研究結果として出てはいるんですが、日本では医療行為とは認められていません。なので効果や効能がある程度認められているものの、それをはっきりと言葉にして伝えることができないのが難しいところです」と話す小池さん。

使う人の健康を考え、効果や効能にこだわって作られたhana to mi シリーズ。体調や目的に合わせて上手に取り入れていきたいですね。


小規模な日本の精油作り
近年小型の蒸留機も出てきて、観光協会が主体となって地域の精油を製造するなど、和精油作りは徐々に広がりを見せています。

北海道では、上富良野の観光協会さんがハーブを刈り取って蒸留していたり、瀧上の町おこしの一環で精油を作ったりしています。また瀬戸内レモンのブランドの精油で地域おこしなども行われています。

生活に根付いたものを原材料に使用し地産地消にもなる和精油ですが、大きな農地がない日本ではどうしてもコストがかかってしまうという課題もあります。

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「うちで扱っているクロモジやこうやまきなどは、山師の人が森で手作業で採るので、丸1日かけてもカゴ一個分くらい。何日もかけて何十キロになっても蒸留して精油になるのは1%程度、ほんのわずかなんです。私も実際に行ったんですが、山が本当に険しく、歩くだけでも大変な場所でした」

飯室さんのお話からも、精油作りの大変さが伝わります。コストがかかってしまうというのも納得ですね。


サステナブルな和の精油
海外で大量生産される精油と比べてコストのかかる日本の精油ですが、実は副産物として作られているものが多く、サステナブルな一面もあります。

「たとえばヒノキの精油は柱を作る製材工場の端材を利用しています。節があるという理由で弾かれた端材を原材料にして、製材で使っているボイラーもそのまま使用できるのでかなりサステナブルですよね」と話す飯室さん。

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他にも和歌山のみかんジュースの副産物として作られる温州みかんの精油などもあり、実は果汁として、皮はエッセンシャルオイルとして、無駄なく使っていくことで需要と供給をうまく回しているんだと教えてもらいました。

廃棄される部分を利用する、環境にも優しい和の精油。原材料を作るための農家さんが少ないからこそ、副産物としての精油を造っていく。和精油作りはhana to mi のコンセプトでもあるサステナブルを実現しているんですね。


オリジナルの香りがもたらす効果
hana to mi をはじめとし、多くの精油や雑貨、化粧品などを販売するフレーバーライフ社ですが、一般の方向けの商品が増えてきたのはここ10年ほどのことで、それまではお客様のご要望に合わせたオリジナルの香り作りや卸業などをメインに行っていたそうです。

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「旅館のオリジナルの香り作りのご依頼もありますし、サロンチェーンさんや雑貨屋さんからのご依頼で化粧品やミスト、ディフューザーなどの商品も作っています。オリジナルの香りは記憶に残りやすいので、その場所を思い出したり、また訪れたいと感じていただけるといいなと思います。」教えてくれたのは小池さん。

確かに、香りを嗅いだ時に懐かしいなと感じることってありますよね。オリジナルの香りを作る上で難しいなと感じる部分はあるのでしょうか。

「精油はそれぞれ値段が違うので、高いものを使いたいとなると製造数が多くできないことがあります。決められた予算の中で精油を調合しイメージに近づけていくのが難しいなと感じることもありますが、出来上がった香りを気に入っていただけるとやりがいを感じます」そう話す小池さんの表情はとても楽しそうでした。


コロナを乗り越えて
これから店舗やイベント会場などの空間芳香の提案にも力を入れていこうという矢先にコロナが流行し、マスクをするから意味がないと導入を取りやめられてしまったり、小売のお店もテナント自体が休みになってしまって商品が売れなくなってしまうという厳しい状況もあったそうです。

一方個人のお客様はコロナ期間中にも徐々に増えてきたということで、その理由についてもお聞きしました。

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「おうち時間が増えたことも理由の一つかもしれません。以前は男性のお客様は少なかったですし、ほとんどがプレゼント用でしたが、最近では自宅用に購入される男性のお客様も増えてきました。あとはマスクスプレーですね。ちょうどコロナの前に発売していたスーッとするような商品があって、よく売れていました。」とのこと。

コロナが終わってマスクも減り、生活が元通りになったことで、香りの提案がしやすくなった今、アロマへの関心や需要のさらなる高まりに期待が膨らみます。


アロマで心地よい睡眠を
最近では、雑誌で『眠りの特集』が組まれるなど、睡眠に関する商品に関心が高まっているようです。フレーバーライフ社の商品も紹介され、お風呂時間から香りを楽しむことでリラックスして心地の良い眠りに入ることができる商品が注目を集めています。

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「眠りとお風呂の専門家」の小林麻利子さんが、睡眠改善インストラクターとして監修をした商品は雑誌でも紹介され、ロフトや東急ハンズなどでも取り扱われ人気を得ています。

質の良い睡眠に入るためには、副交感神経や自律神経を整えることが重要です。お風呂で上がった体温が下がるときに副交感神経が活性化され、同時に香りでリラックスすると、より副交感神経を優位にして睡眠導入に働きかけるので、眠りにつくのが得意ではない人にもおすすめだといいます。


日常のちょっとした時間に
さいごに、商品開発への思いについてお聞きしました。

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「テレビやスマホをやめて自分でマッサージをしたり、香りをシュッとしたり。自分を労わる時間を作るのには、アロマが適しているなあって感じます。とはいえわたしも寝る前についスマホを見てしまったりするんですけどね。でも、毎日のちょっとした時間にリラックスしたり、手軽に自分を労わってあげられるような商品を今後も開発していきたいと思っています」そう話す飯室さん。

日常にアロマをプラスすることで、たくさんの人の毎日がより輝いていくといいですね。飯室さん小池さん、どうもありがとうございました。







hana to miの商品一覧




和精油のエッセンシャルオイル

和精油のエッセンシャルオイル





和精油のアロマティックディフューザー

和精油のアロマティックディフューザー





和精油のアロマティックミスト

和精油のアロマティックミスト





和精油のハンドクリーム

和精油のハンドクリーム







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