それぞれの " ものがたり "

『革製のコンパクト財布』


エムピウ 革財布 コンパクト 日本いいもの屋



大事に使おうと思っていたのに、

届いた初日に引っ掻き傷をこさえてしまった。


大事に使おうと思っていたのに、

赤ちゃんがガジガジ噛んでしまった。


大事に使おうと思っていたのに、

ポケットに入れていたらコインの跡がついちゃった。


まっさらなままでは楽しめない

自分だから出来た傷が

柱に刻む背比べのあとのように

思い出を語る材料になる


今手元にあるわたしの財布には

爪でつけた跡がいつのまにか馴染みきっていて

小さな歯がつけた愛しい傷は今ではありえなくらいの小さなカーブで

カード入れもコイン入れもわたし仕様に膨らんだり柔らかく育っている


いつも手で触れるものだから、

時々予想外の傷がついたりもする

その傷が味わいになることももう知っている

ずっと使いたい理由がある、使うほどにわたしの財布になっていく財布









ものがたりに登場する商品




ミッレフォッリエ



ミッレフォッリエ クアドレッティ









『木製のコーヒーミル』


モクネジ 木製のコーヒーミル 日本いいもの屋



お菓子を作るのは楽しい。

冷蔵庫から出して柔らかくなったバターと卵、牛乳に、小麦粉と砂糖とに少しの塩を混ぜて生地を作る。

フライパンにバターを落としてをあっためたら、生地を流し込む。

その上にバランス良く、スライスしたフルーツを並べる。今日はチェリー。

ひっくり返したら、コップの中でシナモンと合わせたグラニュー糖をスプーンでぐるぐるに混ぜて、

焼けた面に塗る。

いい匂い。焼けた端っこを、手に持っていたスプーンで味見する。

とどめのバターをもう一回フライパンに落として、バターが溶けたらもう一回ひっくり返して出来上がり。

バターのそそる匂いに負けじと、彼が淹れるコーヒーの匂いがしてきた。


お菓子を食べるのは楽しい。

コーヒーミルに、冷蔵庫で大事に保管しておいた豆を計って入れる。

ゴリゴリゴリ・・・ハンドルの手応えがなくなったら、豆が挽けた合図。

すべすべの木の部分をかるーくひねって、中挽きに挽けた豆を取り出す。

お湯を沸かすのを忘れていたので、2杯分のお湯をポットで沸かす。

待っている間に豆のカスをブラシで払って、またボトル部分をカチッとはめる。

円錐型のドリッパーに豆を淹れたら、彼女の焼くケーキの出来上がりに合わせて、お湯を注いでコーヒーを作る。

熱いうちにカットしたお菓子の横に、湯気が立ち上るコーヒーが並ぶ。

誰かと美味しいお菓子を食べるのは美味しい。

そのときに、美味しいコーヒーがあると、もっと嬉しい。







ものがたりに登場する商品





木製のコーヒーミル










『つづれ織りの名刺入れ』


つづれ織りの名刺入れ  日本いいもの屋



「ねぇお母さん、なんでみんなで竹を敷いてるの?」

一度だけ、母と二人だけで、蒸し熱い夏の京都の、大きなお祭りを見た。

大人になって思い返すと、あれは祇園祭の山鉾巡業だった。

車輪の下に割いた竹を敷いていたのは、角を曲がるためだったこともあとから知った。

大きなお神輿は、ダンプトラックより大きく見えた。

数回の掛け声でようやく進行方向を変えると、母がパチパチと手を叩いた。

「全然返事はしてくれないし、拍手するたびに手を離されて、はぐれそうで心配だった」

仲居さんが部屋を出た後、御膳を挟み向かい合って座った母にそんな話をした。

上げ膳据え膳で上機嫌の母は、そうだっけ?と笑った。

勤めだしたら母と二人で旅行することもないかもしれないと思って、

就職が決まった学生最後のこの夏に、母との旅行を思い立った。

繰り返されるお囃子の音色と、力強い山鉾の装飾の豪華さ。

母を独占出来て嬉しかった思い出のお祭りを、母の方ではほとんど覚えていないなんて。

「はい、これ、就職決まったお祝い」

「わぁ、サプライズ?ありがとう」

母がくれた手のひらサイズの箱を開けると、中には深い赤の名刺入れが入っていた。

シルクの名刺入れは、軽くすべすべと手に心地よい。

だけど、この旅行のことも、母はすぐに忘れてしまうんだ。きっと。

お酒が進んだ母が、相変わらずの機嫌の良さで

話し始めた。

「今あげた名刺入れにまつわる話、長くなるけど、聞く?」







ものがたりに登場する商品





つづれ織りの名刺入れ










『虫喰いの壁掛け時計』


虫喰い材の壁掛け時計  日本いいもの屋



新築祝いに何を選んだらいいかわからなくて、


スマホ片手に「ぽいもの」を検索してみたものの、


千差万別でさっぱり参考にならなかった。

こんなときは本人に聞こうか、


「御祝いになにかほしいものあるかい?」


いやいや、遠慮深い彼ら夫婦がすんなり答えるはずがない。


そういえば30年ローンの支払いとか言っていたっけ、

いっそ現金を贈ろうか・・・。


などと考えていたら、新しいメッセージを受信した。


画像つきで、その画像は彼ら夫婦の新しい家の、

遠慮がちに遠くから撮影された外観写真だった。


「うぉ」
思わず声が漏れる。この家って、なんて・・・。

それから、お互いの休みを合わせて、家族で彼らの元を訪ねた。


車をどこに停めたらいいか、連絡しようとしていたところに、

気配を察して笑いながら彼が家から出てきた。


上にタープが張られた広いウッドデッキの窓が開き、

すっかりお腹が目立ち始めた奥さんが顔を出す。


茶褐色のウッドデッキには、折りたたみ式の木のテーブルと椅子が置いてある。


キャンプ好きな彼らが選ぶものは、開放的な空の下がとっても似合う。


彼らのもてなしが、玄関を入ってすぐのセントラルキッチンで待ちかねているのが見える。


キッチンのステンレス以外は、どこを見渡しても天然の、木、木、木。


蹴込がなく踏み板が開放的に並んだ階段を見つけた息子が、さっそく登って手を振る。


吹き抜けが面白いのか、大きな声で息子が僕らを呼ぶ。

遊ぶに事欠かない、木の家だ。
「新築、おめでとう!」
どこもかしこも、

天然の木で作られた彼らの城は、真新しいのに他人行儀でないのがとてもいい。


旧知の友人に今更かしこまるのも恥ずかしく、片手で新築祝いを渡した。


開ける様子を目の前で見るのが苦手なので、息子を追うふりをして二階へ上がった。


家の写真を見て選んだ、壁掛け時計は、きっとこの家の壁に馴染んでくれるだろう。








ものがたりに登場する商品





虫喰い材の壁掛け時計




『きのこのうつわ』


きのこのうつわ  日本いいもの屋









「あちゅまれ~、して」

姪っ子が差し出した器を受け取ったものの、

「あちゅまれ・・・?」

数ヶ月に1度しか会わないわたしには、

2歳にもならない姪っ子の、話す言葉がさっぱりわからない。


「もうごちそうさましよっか?よう食べたね」

ご機嫌を取るように器の中を見せると

「うううん、うううん。あちゅまれして~」

と、首を縦に振ってくれない。ごちそうさまするつもりはないらしい。


「まだ食べたいの?ご飯入れてこようか?」

姪っ子の意図するところを図りかねて提案してみる。

「ちばうちばう!」

どうやら違うと言っているらしい。

姉ちゃん、ギブアップ・・・。とベランダにいる姉を呼ぼうとしたら

「ここ、ここ、あちゅまれ~」

姪っ子が、木の器に残ったごはん粒を指差す。


揃いの木のスプーンで、器に点々と残った柔らかいごはん粒を寄せる。

縁が内側に曲げられているから、スプーンで集めやすい・・・。

「あ、’’集まれ’’か!」

「あちゅまれ~」

姪っ子が言う。呪文のように。わたしも同じことばを繰り返した。

「’’あちゅまれ~’’」

「ちばう!あ、ちゅ、ま、れ~!」

「え~・・・。ハイ。’’集まれ~’’・・・」

スプーンに集めたごはん粒を、姪っ子が頬張った。












ものがたりに登場する商品





きのこのうつわ 3点セット




『銅製のアイスコーヒーカップ』


R&W 銅製のアイスコーヒーカップ  日本いいもの屋



4月に入って何度目かの日曜日。

幼稚園にもすっかり慣れた娘が、僕を呼びながら四角く切り取られたダンボール紙を持ってきた。

「パパ、にゅうえらんで」

「にゅう?」

ダンボール紙には、シールが貼られている。

ソフトクリーム、パンケーキ、スパゲッティ・・・メニューのことらしい。

「ええと、じゃあパンケーキ」

「ママとわけわけしますか」

「え?ああ、わけわけします」

果たして何を持ってくるのか楽しみなので、あえて娘を見ずに待った。

やけにゆっくり歩くな、と思ったら、カップの乗ったお盆を両手に抱えている。

こぼされちゃ大変だと、慌ててお盆を掴もうとすると、僕の手を娘が阻む。

お盆に乗ったカップは銅製だ。万が一落としても割れないけれど・・・。

「はい、アイスコーヒーです」

頼んでないアイスコーヒーを持ってきた娘にお礼を言ってカップを受け取る。

中身はただの氷水のようだ。

氷が入ったカップの持ち手までも、冷たくなっていた。

「ごく、ごく、ごく」

アイスコーヒーでなくても、キンと冷たい水は十分美味しかった。

だけどやっぱり氷を浮かべたアイスコーヒーが飲みたくなったので、

キッチンに向かった。

慌てて娘がタックルしてくる。

「パパー!わたしがはこぶんだからすわっててー」

娘の様子を笑い見ながら、キッチンに立つ奥さんはパンケーキを焼いていた。

脇腹からくるりと娘を抱えて僕もキッチンに立った。

「じゃあ僕が、美味しいアイスコーヒーでも淹れましょうか」






ものがたりに登場する商品





銅製のアイスコーヒーカップ




『木のルームシューズ ツーピース』


水鳥工業 木のルームシューズ「ツーピース」  日本いいもの屋



暑い暑いと言っても、普段暮らす街と比べるとなんだか涼しい。

最後に実家に帰ってきたのはいつだっけ。

ぼんやりと、1時間に1本しかないバスを待ちながら考える。


「お盆やけんね、ルートの変わっとって、病院前には停まらんとけど、よか?」

訛り混じりで話す運転手が、乗車口から首を突っ込んだ年寄りに、繰り替えし説明している。

窓を開けたバスに揺られながら、右手に広がる山を見る。

じきにバスが最寄りのバス停に停まった。

そこには、犬を連れた母がいた。


その大きさに驚いた。


「大きくなっとる」

「そがんやろ、見せようて思って連れてきた」


ー小さくなっとる。

先に思ったのは、口に出したのと逆のことだった。

大きくなった犬と対照的に、母は。


結局会話はそれだけで、前後に並んで長い坂を下って、ようやく家に着く。

外観は周りと似たような古い家だけど、年をとった母仕様に中を改装したのだ。

ああそうか、改装が終わって以来だから、4年ぶりの帰省か。


玄関に部屋履きが並べられている。小さいのと、大きいの。

「俺が使ってよかと?」

「そがん大きか部屋履き、あんたしか使う人おらんやろもん」

足を収めると、初めて履くのに足に馴染んで、踏み出すと床に吸い付いて歩きやすい。


『ゆっくりしていってね』

えらく上等な部屋履きが、不器用な母の代わりに言っている気がした。


「こい歩きやすかとよ」

玄関脇からリビングまで伸びる手すりに軽く触れ、母が歩を進めながら言う。

そうだ、まだまだ。手すりに頼るほどには、母はまだまだ老いてないんだ。


「こいからずっと履くことになるて思うし、よかもん買うてくれてありがとう」


仕事の都合で、来年辺りこっちに戻ってくることになりそうだと、話すのは今夜にしようかな。






ものがたりに登場する商品





木のルームシューズ 「ツーピース」




『Bottle』


モクネジ 木製コップと魔法瓶の水筒「Bottle」  日本いいもの屋



晩御飯を食べてゴロゴロしていたら、母から声がかかる。

「お父さんのバッグ開けて、水筒取ってくれる?洗うから」

洗っといてって言われないだけマシなので、素直に従う。

バッグを開けて、他のものに触れないように水筒を引っこ抜く。

「なにこれ。お父さんの水筒、オシャレ!」

木とステンレスの組み合わせでできた、なんだかオシャレな水筒が出てきた。


「お姉ちゃんからもらったのよ。父の日にって」

母の言葉で合点がいった。母行きつけのスーパーの日用品売り場には、

到底売ってそうもない、すっきりしたデザインの水筒だったから。


昔から、父が職場の役場にお茶を持参する習性は知っていた。


全然かっこよくない太いネクタイを締めたお父さん。

土日が休みでも、姉からもわたしからも母からも相手にされず

朝と夕方犬の散歩に行くしか外に出ないお父さん。・・・父の日、今年も何にもあげてないや。


そして、お風呂上がり。わたし以外はみんな寝静まって、ワンコですら寝ている。


お茶を飲みに台所に立つと、洗い終わった水筒がカゴに伏せられていた。

棚に仕舞おうと、蓋をしめて木のコップを取り付けた。

不思議と、木のコップはボトルにかっちりとはまった。

「お姉ちゃん、抜けがけ・・・」

あげよう、来年はわたしも。お父さんがカッコよく見えるものを。

・・・来年と言わず、今年でもいいか。

ちょっと遅れても多分、お父さんは許してくれるだろう。






ものがたりに登場する商品





木製コップと魔法瓶の水筒「Bottle」




『クタニシールキット』


KUTANI SEAL クタニシールキット 日本いいもの屋



物を落としたり、なくしたり。

私はとても注意不足な子供だった。

傘をさして出掛ければ、雨上がりの帰りには必ず傘を忘れ、

夕飯の片付けをすれば、手を滑らせてお茶碗を割るような。

そんな私に、両親はあえて、「特別なひとつ」を与えてくれた。

南の島で作ってもらった、名前入りのいるかのキーホルダーや、

自分でシールを貼って作る、世界にひとつの手作りお皿。

特別なものを手に入れて、私は考えた。

失いたくないものを、どうしたらずっとそばに置いておけるかと。

壁にピンを挿して、キーホルダーの置き場を作って、失くさないように、注意深く。

お皿を運ぶときも仕舞う時も、目をそらさずに丁寧に。

お皿の真ん中に貼った大黒様が小槌をかざして笑っている。

『ほーれ、気をつけて、運べや運べ』

「特別なたったひとつ」はどんどん増えたけれど、

わたしは物を失くさない大人になった。

物と向き合う姿勢は、両親と、お皿の真ん中で笑う大黒様が教えてくれた。






ものがたりに登場する商品





クタニシールキット 




『新生児ガーゼギフト』


新生児ガーゼギフトセット 京和晒綿紗 日本いいもの屋



家族で過ごす土曜の昼下がり。天気も嫁の機嫌もいい。

いい気分で、積み上げられた洗濯物に手を伸ばす。

が、やり始めたものの、さっぱりはかどらない。

嫁の下着や小さい服は、どう畳めばいいのかわからなかった。

しかも自分の服に比べて、小さい服の多いこと。

それをするとやることがなくなったので、

床で一人遊びする我が子を横目に、アルバムを開く。

アルバムをめくると、撮った覚えがない写真が沢山並んでいた。

「こんな写真、いつ撮ったん」

差し出したアルバムをちらっと見て、嫁が言う。

「そのへんは全部お義父さんが送ってきた写真やで」

「オトン、印刷まで自分でしたんかぁ。やるなぁ」

しれっと畳み直したらしい服を運びながら、嫁が続けた。

「このへんの服やスタイも、ぜーんぶ、お義父さんが送ってきたの」

「こいつの服、小さいからどう畳んだらええんかわからへん」

「気づいた?刺繍までちゃんと入ってるでしょ」

座っていた子が、振り回していた積み木を持ち上げて「じぃじ」と笑う。

まさか。

「その積み木も、『じぃじ』が買うてくれたんよ」

「・・・ほんまか。オカン以上のデレデレっぷりやん」

「じぃじ、甘すぎん?」

「なぁ。」

ちょっと考えて思いついた。

「『じぃじ』、ついでにおれのパンツ買うてくれんかな。ヨレヨレやから」

「はぁ~?」

「おれは刺繍いらんからさ」

「・・・アホか」






ものがたりに登場する商品





新生児 ガーゼギフト 3点セット 




ページトップへ